初めてPHWに参加の逸見さん

「当事者に寄り添う支援の難しさを身に染みて感じました」そう感想を寄せてくださったのは、ハビタットの国内居住支援「プロジェクトホームワークス(PHW)」で取り組む清掃・片付け支援に参加したボランティアの逸見さんです。逸見さんは、ハビタットが居住支援で連携する困窮者支援団体が開催する炊き出しなどにもボランティアとして参加されているそうです。

逸見さんがプロジェクトホームワークスを通じて支援することになったのは、高齢の山中さん(仮名)です。認知症に近い症状が見られる中、さまざまな福祉サービスを受けながら、都内のご自宅に単身で暮らされています。山中さんの見守りを続ける相談員だけでは居室内の環境を整えることが難しくなり、ハビタットに相談が寄せられました。これまでの支援では、山中さんのお宅のキッチン周りと物置と化した部屋の片づけに取り組みました。そして、逸見さんが参加くださったこの日は、山中さんが一日の多くの時間を過ごす居間の片づけに着手しました。リサイクルに回すモノを仕分けて整理した上で、劣化した畳の上に真新しい絨毯を敷き詰めることがこの日の目標です。

山中さんの居間の壁際には、いくつもの衣装ケースが無造作に積み上げられています。そして、ケースの上には分厚い埃が堆積しています。ケースとケースの間には固定紐が装着されていますが、どれも劣化が酷く、今にも切れてしまいそうな状態です。大地震がくれば、積み上げられたモノが崩れ落ちる危険性をはらみ、居室内が安心・安全に暮らせる環境とは程遠い状況にありました。

山中さんのお宅で初めてのPHW活動を終えた逸見さんからは、次の感想が寄せられました。

「『住居の保障』と合わせて『住み良い住環境の保障』を目指していることに共感して活動に参加させていただきました。貧困支援の現場でよく触れるのは、前者についての議論であり、後者についての議論にはあまり触れたことがなかったので、私自身この問題について深く考えたことがありませんでした。ホームパートナーさんは、認知症に近い症状があることもあり、周りから指摘されない限り、埃まみれの部屋でその問題性に気づくことなく生きていたのではないかと想像できます。そういった無意識の中で抱える生きづらさを第三者が発見して向き合うことはとても難しいですが、今回参加させていただいたような活動に参加する中で、他者が抱える生きづらさに対する想像力を養っていけたらと思っています。それと同時に、当事者の気持ちを置き去りにしてはいけないことの難しさについても考えさせられました。住環境はその人にとってかなりセンシティブな問題だと思うので、部屋をきれいにすることで違和感が生じてしまわないか、そんな不安を感じながら作業していました。部屋の乱雑さはその部屋の家主の生活の積み重ねであり、それを第三者がきれいにすることはその歴史を一度まっさらにすることのように感じられるからです。

『部屋をきれいにする事』ではなく『住み良い住環境の保障』が目的であることを忘れてはいけないと思います。活動する中で、『きれいにしたい』という気持ちが先行し、支援の本質を忘れている自分がいることに気付かされ、当事者に寄り添う支援の難しさを身に染みて感じました。また、見たこともないような埃の塊を目にして、生活に寄り添う日常的な支援の大切さも身に染みて感じました。一度埃が溜まってしまった場所は完全にきれいにすることができなかったからです。溜まってきた時に支援に入るのではなく、日常的に整理整頓ができるような支援ができたら理想的だと思いました。今回の活動を通して、ただ住居を保障すればいいのではなく、住居を保障した先には、長く続く当事者の生活があり、その営みにこそ本質があるのだと気付かされました。生活保障がどのように行われるべきか、これからも考えていきたいと思います。」

  • 清掃・片付け支援の様子

  • 活動終了後

逸見さんが共有してくださった支援の本質、それは、私たちハビタットスタッフも常に振り返りながら支援に取り組む本質です。最近では、活動を終える際にホームパートナーさんが見せてくださる表情から、その答えを知ることができているように感じます。また、ハビタットではPHWの活動では高齢者総合支援センターや障がい者福祉センターなどと連携することで、必要とされる日常的な生活援助にホームパートナーが繋がり、支援を終えた後の生活において、最低限の住まいの安全と安心が保証されることを目指しています。

ハビタットは、清掃・片付け支援を通じて、一人でも多くの方が安心して、そしてより安全に暮らせる居住環境を取り戻せるよう取り組んでいます。活動へのご支援、またボランティアとして引き続きのご支援とご協力をお願いいたします。