物静かで穏やかな山田さん(仮名)は、ハビタットの国内居住支援「プロジェクトホームワークス」の清掃・片付け支援を通じて、10月に支援を開始したホームパートナーのお一人です。山田さんは母親が亡くなるまですべての家事を母に任せ、二人で暮らしてきたそうです。しかし、その母親が亡くなったことをきっかけに、50代で初めて一人暮らしをすることになり、数年前に今お住まいの団地に引っ越してきたそうです。しかし、精神的な疾患を抱えていることもあり、日々の家事をこなして生活環境を整えるのが難しく、気がつくと部屋の中は大量の本や雑誌、服などで床が覆われた状態になっていたそうです。今は、ベランダの前に見えるいくばくかの床が山田さんのスペースとなり、そこに布団を敷いて毎日眠っています。

ハビタットへは地域活動支援センターの相談員さんより片付けの相談が寄せられました。ヘルパーさんによる日常生活援助を受けることを検討しているそうですが、その前にまずは部屋の中の生活環境を整えて、安心安全に暮らせる住まいを取り戻すことを目指しています。

緊急事態宣言が明け、約3ヵ月ぶりに再開したボランティア動員の初日が山田さんのお宅での活動となりました。ボランティアさんに加え、相談員さんと支援センターの実習生さんも片付けに加わるなど、久しぶりに賑やかな活動となりました。山田さんご自身もハビタットの支援をきっかけに片付けに気持ちが向いてきたようで、事前にキッチンのシンクを掃除するなどしていたほか、活動中も一緒に汗を流しながら積極的に片付けに加わりました。この日の活動は、大量の本と雑誌をご本人に一点ずつ確認しながら必要なものと不要なものを仕分け、洋服は長袖、半袖、ズボンなど種類ごとに分けて段ボール箱にしまいました。そして、山田さんにとっての暮らしやすい生活動線を話し合いながら、一旦は本と洋服をひとつの部屋にまとめ、広くなった畳の部屋に布団を敷いて眠れるスペースを確保することにしました。次回は、収納家具などを備えていない部屋に収納棚を設置し、モノの整理整頓を進めると共に、手をつけられなかったキッチン周りの片付けを進めていく予定です。

ハビタットに寄せられる相談の中には、山田さんのようにご自身が持つ障害や疾患による特性から片付けが滞ってしまい、居室内の環境が悪化してしまう方が多くいます。例えば、うつ病のため片付けへの気力が沸かない、ADHDなど発達障害によって片付け方が分からない、認知症で同じものを購入したり家事ができなくなる、また精神疾患の一つである「ためこみ症」によってモノに囲まれていないと不安になる、などモノを片付けられない、またモノをため込んでしまう背景はさまざまです。こうした障がいや疾患は外から見えにくいこともあり、片付けに困難さがあることが周りにうまく伝わらず、「だらしない」、「片付ける能力がない」、「わがままだ」などと思われてしまう周りの評価に苦しさを抱えている方もいます。そうしたホームパートナーさん一人ひとりが抱える事情を理解しようとする姿勢を持って片付けをお手伝いすることは、清掃業者に頼んで表面上に見えるモノを片付ける活動との違いです。ハビタットには、ホームパートナーさんとのコミュニケーションを通じて、思いを尊重しながら進める清掃・片付け支援が求められていると感じています。ボランティアに参加くださる皆さまには、ぜひホームパートナーさんの背景にも目を向けながら活動してくださると嬉しいです。11月のボランティアのお申し込みはこちら

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