2011年3月11日の東日本大震災より、今年で10年を迎えます。ハビタット・ジャパンでは、世界中から被災地を思う皆さんのご支援を受け、また多くのボランティアの皆さんにご協力いただきながら、震災発生直後から2015年までの4年間、岩手県と宮城県で緊急支援、および復興支援活動に取り組みました。震災直後は津波被害を受けた家屋のがれき撤去から始まり、仮設住宅やみなし仮設での生活物資の配布や居住環境を改善するための建築支援、被災家屋の修繕や相談会の実施、公民館の修繕、被災したコミュニティに漁師小屋の建築や遠方の学校まで通うことになった子どもたちのためのスクールバス停の設置など、被災された地域の方と共に、その時その時何ができるか、何をすべきかを考え、一歩ずつ歩み続けた日々でした。(東北復興支援の取り組みはこちらをご覧ください)
ハビタット・ジャパンの支援事業が終了した後も、キャンパスチャプターに所属する学生ボランティアの皆さんが、継続的に被災地でのボランティア活動やスタディツアー等に今も参加しています。特に宮城県にある東北大学の学生を中心にハビタットのチャンパスチャプターとして活動するAs Oneでは、定期的に地元宮城県のボランティア活動に参加し続けています。As Oneで代表を務めた現在大学4年生の菊地寿茂さんが、大震災から10年となる東北から伝えたい思いを語ってくれました。
私は宮城県美里町出身で、震災当時は中学2年生でした。美里町は宮城県の内陸に位置するため、被災したと言っても津波の記憶は私にはなく、先月改めて津波の被害が大きかった同じ宮城県名取市にある『閖上の記憶』という資料館を訪問し、語り部の小齋正義さんにお話を伺いました。小齋さんは「当時津波のことを知らなすぎた。あの怖さを知っていれば、すれ違う人たちに声をかけられたかもしれない。津波について知ることで、守れる命がある」と、未来の命を守るため、津波のことを知ってほしいとお話してくださいました。自分だけが助かってしまった…と語る小齋さんのお話を聞き、多くのことを思い返しました。
私もAs Oneの仲間や後輩たちと宮城県のさまざまなボランティア活動に参加し、女川町の『ゆめハウス』では、ハビタットが支援し修繕された施設で、地元の高齢者の皆さんと一緒に農作業をお手伝いしたり、また石巻市の『こころの森』では、津波が被った土地に新たに木を育てる植林ボランティアに参加しました。また石巻の大川小学校では、お子さんを亡くされた方にお話を聞いたこともあります。例え何年たっても癒えることのない、我が子を亡くしたご遺族の悲痛な思いは、私自身も生涯忘れることのないお話でした。
10年前に地震が起きた時、友人の家にいて、急いで家に帰りました。家に着き、先に帰っていた兄と姉を見てどれだけ安堵したか。また仕事に出ていた両親が自宅に戻るまでどれだけ不安に感じたか。小齋さんのお話を伺い、電気もガスも水道も無い生活をしたことや、As Oneでのボランティア活動を振り返り、被災された方やボランティアの方々との出会いがあったことなど、たくさんのことを思い返しました。そして、宮城の人間として、ハビタットの仲間をはじめ、震災のことを知らないもっと多くの人に、私が見て聞いてきた震災のこと、東北のことを伝えられたのかもしれないと。自分がたくさんの人に出会い、知った情報や多くの想いを、伝えただろうかとも思いました。
その一方で、この3月に大学卒業を控え、As Oneや全国のキャンパスチャプターの仲間たちと頑張ってきたことを振り返ると、「ハビタットのキャンパスチャプターとしての活動を誇りに思う」と後輩たちに思ってほしいと思うのです。社会人になり、地元を離れたり、ボランティアに参加できなかったりと、多くの人たちがこれまでのような形で活動に参加することが難しくなっていくと思います。それでも、限られた学生時代に、仲間たちと地元のボランティアに参加したり、興味がないことでも先輩について参加してみると関心を持ったりと、若い自分たちができることに取り組んでいるキャンパスチャプターの仲間たちを誇りに思いますし、As Oneの後輩たちにも、積極的に東北での活動に足を運び続けてほしいと思います。
小齋さんが「伝え続ける」ことの大切さを教えてくださったように、自分がハビタットの活動を通じて知ったこと、学んだことを、後輩たちに伝え、また後輩たちが自分たちで考えながら、その次の未来へ伝えていってくれると信じます。
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菊地さんが訪ねた、閖上の鎮魂の場である日和山。参拝する人々の休み場所にとハビタットが建てた東屋が今も人々を迎えている
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今もある閖上の東屋を、当時のボランティアさんが建てる様子。全国にあるキャンパスチャプターの先輩の多くも活動に参加した
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女川『ゆめハウス』で農業のお手伝いをするAs Oneのメンバー
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石巻『こころの森』で津波被害のあった土地での植林支援をするAs Oneのメンバー
ハビタットが取り組んだ東日本大震災復興支援には、キャンパスチャプターに所属する学生をはじめ、全国から多くのボランティアが集まり、活動にご参加くださいました。そして東日本大震災を機に築かれたボランティアネットワークはハビタットの国内居住支援「プロジェクトホームワークス」や、児童養護施設の修繕プロジェクトに今も生かされ、その時に必要な住まいの支援を続けることができています。「誰もが安心・安全に暮らせる住まい」に向けた取り組みを続けることこそ、ハビタット・ジャパンが東北から学んだことであり、未来に伝え続けることだと信じ、活動を継続してまいります。