昨年末の入居支援を経て今月転宅を予定するのは、70歳を間近に控えた坂田(仮名)さんです。長年連れ添ったパートナーがお亡くなりになられてからは、貯金で暮らしてきたそうですが、その貯金も底をつき、2年前から生活保護を受給し生活しています。パートナーの方と暮らしたアパートの一室がお住まいですが、アパートの建て替えが決まり、今年の1月までに退去することになりました。そこで、困窮者支援団体を介して居住支援法人であるハビタットに坂田さんの入居支援の相談が寄せられました。

坂田さんの印象は、とても快活で、お話上手な方です。お一人でも転宅に向けて準備ができそうですが、一人では不安だと話します。脅迫観念により不安を抱え、心身の安定のためにクリニックに通っているそうです。そして「不動産店を訪ねても、年を聞かれてよい顔されないわ。まさか自分がこうなるなんて思わなかった。」と、物件をお一人で探す難しさを口にしました。

坂田さんの入居相談が寄せられたのは11月下旬のこと、退去まで2ヵ月ほどしか時間が残されていませんでした。早速支援を開始し、最初に訪れた不動産店では4つの物件を、2つ目の不動産店では幸いにも10もの物件を紹介していただくことができました。坂田さんが長く、安心して暮らせるよう、紹介いただいた物件を一つずつ確認し、最終的には、9つの物件を内見することになりました。今お住まいの区域であること以外にこだわりがないと話す坂田さんでしたが、内見を進めていくと精神的な問題でエレベーターや一階のお住まいでは安心できないということが分かりました。また実際に訪れてみると、共有部分の階段が急であったり、ご高齢の方には活用が難しいロフトがお部屋に備わっているなど、結果的に入居を希望する物件が1部屋に絞られました。しかし、ここで安心はできません。入居の決定には貸主による「入居審査」に通る必要があります。審査に通らない場合、再びいちからの物件探しになるため、祈るような気持ちで結果を待ちました。そして、無事審査を通過した旨の連絡を受けた際には、坂田さんと共に喜びを分かち合いました。

地域で起こりえる災害を確認

年が明けた1月上旬、転居に向けた準備の開始です。まずは賃貸契約の手続きから始まりました。お手続きはご自身で対応できそうな坂田さんですが、「一人じゃ不安だから、契約日に同行してください」そうお願いされ同行することに。当日は役所から転居費用を受けとり、まずは物件を仲介してくださった不動産店への仲介手数料の振り込みから始まりましたこれまで家賃は大家さんに手渡しし、電気代などは払込用紙を持ってコンビニで支払っていたという坂田さんにとっては、ATMを使った振込は不慣れで、タッチパネルの操作に苦戦されていました。振込方法を一つずつ確認して、今後お一人でもできるよう教えながら振り込み手続きを完了しました。そして、その後、物件を管理する不動産店に移動し、新しいお住まいに入居するための費用を支払い、賃貸契約書を確認、無事に契約を完了することがでしました。次にお会いするのはお引越しの日です。

坂田さんの入居支援を通じて改めて気づかされたこと、それは現代の生きづらさです。さまざまな情報がネット上に溢れ、インターネットに慣れている方にとっては便利となった一方、使えない方にとっては情報をとるのも一苦労です。電話番号を見つけて、コールセンターなどの相談窓口に電話をしようとしても、始まるのは慣れないコンピューターによる音声案内、街中に増えるタッチパネルは指で押しても反応しない、そんな些細な事の一つ一つを誰とも共有できないことが、更なる孤独と生きづらさを深めるように思います。賃貸契約を無事に終え、一安心した坂田さんからは、「本当にありがとうございます。孤独な人は沢山いると思うわ。ハビタットさんが必要よ」とお礼の言葉を頂き、住まいを探すと共に、住まい探しを通じた人と人との関りが何より大切であることを再確認しました。

相談を寄せてくださるホームパートナーが、住まい探しを通じて社会との関りを持ち、新たな住まいを基盤に自立した生活を営めるよう、ハビタットは、引き続きホームパートナーに寄り添い、一人でも多くの方の入居を支援して参ります。ハビタットの国内居住支援「プロジェクトホームワークス」で取り組む入居支援、そして清掃・片付け支援は皆さまにお寄せいただくご寄付で活動を継続できます。活動へのご支援をよろしくお願いいたします。