2017年に立ち上げた国内居住支援プログラム「プロジェクトホームワークス」では、都内を中心に居住環境の改善を必要とする方を支援する活動(今ある住まいを守る)と、新しい住まいを必要とする方の住まい探しを支援する活動(新しい住まいにつなぐ)の二本柱で、身近に潜む住まいの問題に取り組んでいます。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、今、ハビタットには、連携団体を通じて新型コロナウイルスの影響で住まいを失った方々の住まい探しの相談が届いています。

住まいを持つことが当たり前のように思われている日本でも、コロナ以前から「家」と呼べるような住まいを持てない方がいます。社員寮に暮らす場合、仕事を失うと同時に住まいを失うことになります。また、日雇い派遣など非正規雇用で就労するものの、毎月のアパート代が払えず、ネットカフェや漫画喫茶を寝床にする「ネットカフェ難民」もいます。4月に発出された緊急事態宣言では、都内にいる約4,000人ものネットカフェ難民が帰る場所を失いました。

日本の社会保障制度では、生活困窮者のセーフティーネットとして「生活保護」が挙げられます。困窮度合に応じて、生活や住宅などの扶助を通して、最低限の生活を保障するとともに、自立の助長を図ることを目的としています。一方、生活保護の受給に至る前の自立をサポートする仕組みとして、「生活困窮者自立支援制度」があり、各地域に相談窓口が設けられています。それぞれの窓口は相談者の困窮度合や就労状況により異なることから、私たちが関わった当事者の中には、どの窓口に相談を寄せるべきか、情報も乏しく、窓口をたらいまわしにされた実態が浮き彫りになりました。

帰る場所を失い、手持ち資金が底をついた状態では、自力で困窮する状況から抜け出すことは困難です。緊急事態宣言が発出された当初、生活保護の受給を申請した者には、都の用意したビジネスホテルの利用が認められませんでした。その背景には、生活保護受給者は「無料低額宿泊所」を斡旋することが常態化しているからです。「無料低額宿泊所」は相部屋や大部屋の施設も依然として多く、コロナの防疫の観点から適切な対応とは言えません。そこで、支援団体が都に要望書を提出するなどし、ビジネスホテルの利用が生活保護受給者に開かれることになりました。日々制度が変わる中で、自力で最新の情報を得て、適切な窓口につながり自立の糸口を見つけることは難しく、中には、生活保護を受給できずに、生活困窮者向けの貸付制度の利用を試みた方が、住民票を喪失してしまったために貸付制度を利用できなかった、など助けを求めても声が届かない現実がありました。

ハビタットが「新しい住まいにつなぐ」事業を開始してからこの4月で丸3年が経過しました。この間に見えた課題は、生活保護や限られた年金で暮らす独居の高齢の方、障がいを持つ方の住まい探しは、不動産オーナーからの理解を得ることが困難であるという現状です。また、生活保護から家賃として受給される住宅扶助の範囲内で借りられる賃貸物件戸数には限りがあるということです。この4月の生活保護の申請率は、コロナの影響もあり昨年の24.8%増しであると言われています。困難が介在する住まい探しに、コロナは更なる陰りを落としています。ハビタットは今、生活困窮者をサポートする「つくろい東京ファンド」などの連携団体を通じて、ビジネスホテルなどに滞在する方々が自立した生活を営めるよう、「無料低額宿泊所」ではなく「アパート」などの賃貸物件への転宅を支援しています。一人では難しい不動産情報の提供から、不動産物件の内覧同行、また契約手続きをはじめ、入居に向けた家財の購入などをお手伝いし、新たな住まいで生活を立て直せるようサポートしています。住まいに関するお困りごとを抱えている方、どこに相談すればいいのか分からないという方もまずはハビタットまでご相談ください。新しい住まいや、適切な関係機関へつなぎ、自立した生活を営めるようお手伝いいたします。