新型コロナウイルスの感染拡大そして全国規模の緊急事態宣言の発令により、多くの方が長い時間を家の中で過ごし、住まいの大切さ、人とのつながりの大切さを改めて認識しているのではないでしょうか。
支援を行う上で、ボランティアや関係者の安全を最優先とするハビタットでは、感染予防措置として国内居住支援「プロジェクトホームワークス(PHW)」の活動を自粛し、2ヵ月が経とうとしています。「家にいよう(Stay Home)」が叫ばれる中、ハビタットが支援を継続している方をはじめ、これから活動を予定していた方々は、今も居室内の環境改善がなされないままこの難局を乗り越えようとしています。
一人暮らしの高齢女性である中島さん(仮名)は、「最近は一歩も外に出ないようにしている」と話します。体が不自由な中島さんにとって、ヘルパーさんに付き添ってもらっての外出時間はとても貴重なものでしたが、今ではそれも控えているようです。そんな中島さんが毎日過ごす居室内は、古くからの衣類や雑貨があふれ部屋や廊下すべての壁沿いに高く積みあがっています。地震が起きれば、いつ崩れてきてもおかしくない危険な状態です。また一人暮らしの高齢男性である山田さん(仮名)は、内部疾患を抱えており、動くとすぐに体が疲れてしまいます。もともと片付けが苦手だったそうですが、最近は動けない日も多く、溜まった生活ごみの上に小さくうずくまって眠っています。床が見えないほどのごみが敷き詰められており、害虫が発生する不衛生な環境で毎日過ごしています。
ボランティアの中には、時にあまりにもひどい居室内の環境に、「なぜこうなってしまうのか。そのきっかけは何なのか」と疑問を持たれる方がいます。その背景はさまざまで、一概に答えを出すことはできません。しかしPHWの活動を通して見えてきたことの一つとして、居室内の環境が悪化してしまう要因に、「人とのつながりが薄れ、孤立してしまう」ことが多く見受けられます。中島さんや山田さんも、不便を感じながらも周囲に助けを求めることなく暮らし続け、福祉センターやハビタットにつながるまでは長い時間がかかっています。家からあまり出られない、人にあまり会わない、そんな窮屈さや孤独感を感じながら、長い間生活を続けていたことが窺えました。
こうした方々の生活を想像してみると、私たちが今直面している、外出自粛を強いられるこの状況と重なるものがあるのではないでしょうか。終わりが見えないこの状況が続くことで、漠然とした不安が大きくなり、生活環境を整えることに気持ちが向かわないと感じることはありませんか。そうして気づけば、一人では手の付けられない居室環境の悪化に陥ってしまう人がいるかもしれません。それは高齢の方や障がいを持つ方に限らず、ひとり親世帯や一人暮らしの若者など、誰にでも起こり得ることです。
居室内のことは外からは見えず、容易に孤立へつながり、小さな困りごとでさえ誰にも頼めずに苦しんでいる方がいても、なかなか気づくことができないのです。だからこそPHWでは、ボランティアと共に訪問して活動することをとても大切にしています。住まいの環境改善に加え、付加価値として活動を通してさまざまな世代、さまざまな立場の人たちの間につながりが生まれることで、困りごとがあるときに頼れる人がいる、頼れる場があるということを、支援する方をはじめ、ボランティアの方たちにも感じてもらうことが重要です。
多くの人が孤独や窮屈さを感じる今の生活ですが、そのような環境に置かれた今だからこそ、不安定な住まいの中で生活している人、さまざまな環境に置かれている人が今もいることを、多くの方に考えていただけることを願っています。「家にいよう(Stay Home)」、その「家(Home)」がすべての人にとって安心できる場であるように、誰もがきちんとした住まいを持てることを、私たちハビタットは目指しています。
「見捨てないで、また来てくださいね」と、冗談交じりに電話口で話される方に「必ずまた訪問するので待っていてください」と、今はそう伝えることしかできませんが、PHWの活動が再開されることを心待ちにしている方がたくさんいます。安全が確保でき次第、ハビタットは今まで以上の頻度で国内外で住まいの支援に取り組んで参ります。ボランティアとして、またサポーターとしてハビタット・ジャパンの活動をご支援ください。ご寄付はこちらから。