昨年末の国内居住支援プログラム「プロジェクトホームワークス」で訪れたのは、アフリカ出身で流暢な日本語を話す笑顔の素敵なマリーさん(仮名)のお宅です。マリーさんは一人で小学生の息子さん二人を育てるシングルマザーです。

マリーさんのお宅は、ご近所からいただいた食器や、ご自身の好きな洋服や靴、成長していく子どもたちのものなどが次第に増え、捨てられずに溜め込まれていったそうです。そうして物が増えていくうちに徐々に掃除が行き届かなくなり、居室内に害虫が発生し、不衛生な環境に陥ったそうです。こうした居住環境下にいることで、マリーさん自身も次第に持病であるぜんそくが再発してしまい、入退院を繰り返していたそうです。またお子さんの一人にもぜんそくの症状が出はじめ、一刻も早い居室内の環境改善が必要だと、地域の保健センターを経由してハビタットに相談が寄せられました。

相談後、ハビタットのスタッフがマリーさんのお宅を訪問すると、居室内は思いのほか片づいていました。話を伺うと、子どものぜんそくが悪化していってしまうことから、マリーさん自身で物の分別をして、不要なものを処分してきたそうです。また害虫の発生にとても困っていたので、経済的余裕は無いなかでもなんとか費用を捻出して、害虫駆除の業者に入ってもらったそうです。同行していた保健センターの相談員さんも、居室内の環境が改善されていることにとても驚いていました。しかし、一方マリーさんが一人で頑張りすぎてしまうことへの体の負担を心配されていました。実際に、お話を伺う間も、何度も咳込んで苦しそうなマリーさんです。

そこでハビタットでは、普段の掃除では手の届きにくい、押入れの天袋や冷蔵庫や棚の裏などを中心に清掃のお手伝いをすることになりました。一見片付いているように見えたマリーさんのお宅ですが、天袋や冷蔵庫裏には小さな虫が多く、不衛生さが見られます。こうした見えないところの不衛生さが、ぜんそくに影響していたのかもしれません。

天袋は物を全て出してみると、湿気のせいか薄い壁板がゆがんでいます。湿気対策の方法などをボランティアがアドバイスすると熱心に聞いて、質問をするマリーさん。居室内の環境を何とか改善しようというマリーさんの思いが伝わってきます。

プロジェクトホームワークスで出会う多くの方が、ご自身では気づかないうちに物を溜め込まれています。物が溜め込まれることで、掃除するスペースがなくなり、床には紙や段ボール、時に食べかすが残されたままとなり、虫が発生するケースが見られます。特に、湿度が高い時期などは虫が繁殖しやすく、不衛生な状態に陥る方もいます。「日本人は人にお願いするのが苦手」と言われるように、プロジェクトホームワークスで出会う多くの方々が住まいの悩みを長年抱えられています。そして、周りに相談出来ずに自身で何とかしようと頑張られた方もいますが、時に頑張りすぎが体や心に負荷となることがあります。ハビタットが取り組むプロジェクトホームワークスであるからこそ、片付けを必要とする方にとって
安心して相談できる場となること、そして一人ひとりが置かれた状況に寄り添い、時に時間をかけてボランティアの協力を得ながら住まいの改善に取り組んでいくことは、ハビタットだからこそできる大切な役割です。今後もマリーさんのお宅の様子を伺いながら、必要に応じて一緒に居室内の環境改善に取り組めるように見守っていきたいと思っています。

  • 湿気対策を書いて、マリーさんに見せるボランティア

  • 床回りも清潔に

  • J.P.モルガンのボランティアが参加

  • お子さんの勉強スペースを片付け