7月に実施した国内居住支援「プロジェクトホームワークス(PHW:Project HomeWorks)」の一日に集まってくれたボランティアは、キャンパスチャプターに所属する大学生3名です。その内、大学2年生の太田さんは今回の活動が初めての参加でした。太田さんは、キャンパスチャプターの次期副代表への就任をきっかけに、PHWに参加することを決めたそうです。団体をまとめ、運営を行う次期副代表として、PHWの活動や意義を理解し、仲間や後輩たちに活動を広めていきたという思いを持って参加してくれました。

 この日伺ったのは、お一人暮らしの40代の女性、鈴木さん(仮名)のお宅です。こころの病を抱えていることもあり、体調が優れない時は横になっていることが多いそうです。そのため、部屋の掃除が次第に行き届かなくなってしまったとのことでした。女性を担当する保健センターの担当者は、こうした状況を改善し、その後福祉サービスである日常の生活援助を行う「ヘルパーサービス」に繋げたいと、ハビタットに相談を寄せてくださいました。

 鈴木さん宅へ伺うと、床は物が散乱している状況ではありませんでしたが、油分によるべたつきに埃がこびり付き、不衛生な状態でした。太田さんたちボランティアは、1時間以上かけて床をこすり、汚れを落とす作業を行ってくれました。根気のいる作業ですが、学生らしくおしゃべりを楽しみながら和やかな雰囲気で時間が過ぎて行きました。

 この日は掃除とあわせ、布団の交換・設置を行いました。当初は、敷布団だけの交換で良いとおっしゃっていました。しかし、掛布団は茶色く変色し、長年干さずに使用してきた様子が伺えます。それでも、無理強いはできません。どんな状態の布団でも、鈴木さんにとっては使い慣れた愛着のある大切な布団かもしれません。鈴木さんの気持ちを汲みながら話をした結果、古い布団を捨てずに保管しておくことで、新しい布団に交換するという気持ちになってくれました。新しくなった布団が敷かれ、その上に横になると、鈴木さんからは「きもちいい」という言葉が漏れました。

 活動後、太田さんに感想を伺うと、「鈴木さんがお布団に入って、気持ちいいと言ってくれた時が一番うれしかった」と笑顔で話してくれました。また、「PHWの活動は楽しいし、意義も感じます。でも、それを伝えていくのって難しそうですね」と、そんな思いも正直に話してくれました。

 部屋の片づけや清掃、布団の交換、簡単な修繕を通して「居室内を整えて安心して暮らせる環境にする」というのは、PHWが目指す最初のゴールです。しかし、PHWには、単に目の前の状況を改善すること以上の価値を生み出すことがあります。人の寿命は社会とのつながり度合いに影響するといわれているように、人は社会の中で居場所を見出し、そこでの役割を持つことで日々の暮らしに活力を得ることができます。PHWで出会う方の中には、人や地域との関わりを避けて、もしくは社会から孤立した状態で過ごされている方がいます。そこで大切なのはボランティアの存在です。PHWの活動は、見ず知らずのボランティアが家の中に入り込み、自分が抱えていた住まいの困りごとに手を差し出してくれる人がいるということを知る機会になります。

 ボランティア同士の、またホームパートナーに掛けられた会話が社会との関わりを失いつつあるホームパートナーの心に刺激や活力を与え、閉ざされた心の扉が徐々に開かれることがあります。一方、ボランティアはホームパートナーを知る中で、こうした住環境の悪化は決して他人ごとではなく、自分たちの家族をはじめ、身近なところで起きている、あるいはこれから起こりうる問題であることに気付かされます。

PHWで言う「住環境」とは、日々の暮らしを営む場を含め、暮らしを取り巻く社会的な環境を含めています。PHWの活動で生まれるつながりはとても小さなものかもしれませんが、居室内の住環境を改善するだけではなく、そのつながりから、その方の先々につながる社会とのつながり、「安心して暮らせる住環境」を築く土台となることも期待しています。

 今回初めてPHWに参加してくれた太田さんのように、まずは「知る」一歩を踏み出してみませんか。ボランティア募集の情報はこちらよりメルマガにご登録ください。