2030年までに国際社会が達成目標として掲げた「持続可能な開発目標(SDGs: Sustainable Development Goals)」の一つ、「ゴール6:安全な水とトイレを世界中に」は住まいの支援に取り組むハビタットが実現を目指すゴールの一つです。健全で豊かな生活を営む基盤には安全な水とトイレは欠かせません。ハビタットでは、水とトイレの問題を抱える国でゴール6の実現に取り組んでいます。

ゴール6の達成に取り組む国の一つが、今春も日本から最多となる11チーム168名を派遣したカンボジアです。カンボジアは20年間続いた内戦により、その当時の人口で4分の1にも上る人々が命を落としたといわれています。近年は海外からの投資が著しく、都市部では景気拡大がみられるものの、都市と農村部の間に所得格差が広がっています。都市部においても貧困の格差が顕著に拡大していて、首都プノンペン近郊だけで20以上のスラムが存在しています。また、人口の3分の1が1日3ドル以下での生活を余儀なくされていると言われています。さらに、水とトイレに関してはいまだ深刻な課題を抱えています。カンボジア全体でみると、400万人もの人々が安心して利用できる水にアクセスができない上、600万を超える人々がトイレといった衛生設備を利用できない状況にあります。

アンコールワットがあることで有名な古都シェムリアップも、安全な水とトイレへのアクセスが喫緊の課題となっている地域の1つです。シェムリアップ州はカンボジアにある25州の中でも3番目に貧しい州で、人口の25%が健全な家での暮らしが出来ておらず、その内5000家族が道路や川沿いなどに違法に住居を構え生活しています。そして家を持っていたとしても、その半分はトイレへのアクセスがありません。

ハビタットはこうした状況を受け、住居支援を行うホームオーナー家族へは必ずトイレの設置も行っています。そして安全に使える水の普及とトイレの設置に加え、子どもたちへの衛生教育にも力を入れてきました。日本からも、現地に渡航した多くのボランティアが水とトイレの支援に参加し、自身が幼い頃に学んだ手洗いの大切さをカンボジアの子どもたちに伝えています。

この春、5年前に日本のボランティアで給水塔の設置を支援したシェムリアップ近郊の小学校をスタッフが再訪しました。給水塔ができるまでは学校には井戸しかなく、含有物の多い井戸水を飲むほかありませんでした。現在使用している給水塔には、含有物を除去するフィルターが取り付けられているため、子供たちの体への影響を心配せずに水が飲めるようになりました。生徒の中には空のボトルを持参し、給水塔から水を汲んで教室でも飲んでいる生徒もいるそうです。さらにハビタットはそこで教鞭をとる先生方へも衛生教育を行い、そこで学んだことを学校の新年度ごとに先生が生徒に教えます。その結果、食事の前後に子供たちが手を洗うようになったそうです。「今はこの給水塔のおかげできれいな水を飲むことができるし、子どもたちに手洗いの習慣が身に付いたよ」と、校長先生は教えてくれました。安全な水は健全な生活を営む上では欠かせません。ハビタットでは引き続き安全な水やトイレへのアクセスを支援することできちんとした住まいの実現に取り組んで参ります。