2月後半、50名の学生が一堂に介してインドネシア、ジョグジャカルタに向かいました。今回の渡航目的は、私たちが支援するセロパミロ村(セロ村)に2軒のコミュニティセンター(公民館)を建てるためです。2016年からセロ村でコミュニティ支援を開始し、これまで26チームを継続的に派遣、49家族の住居建築を支援してきました。コミュニティセンター建築の支援要請はセロ村で活動を始めた当初から寄せられていました。資金調達の目途が立った今春、ようやくコミュニティセンターを建築するはこびとなりました。

ライスフィールドに囲まれたセロ村は、雨季には緑が広がるとても長閑な村です。農作物が主な収入源となるため、80%の村民は農業に従事しており、その他は市内に出稼ぎに行きます。インドネシア政府の統計によると村全体の人口のうち68%が貧困層に属するとされ、ハビタットが住居の建築を支援してきたホームオーナー家族の収入は100ドル/月にも届かないのが現実です。

セロ村は村内が18地区に分かれており、今回は住居支援に取り組むランテングⅠ地区とカリダダブⅡ地区にコミュニティセンターを一棟づつ建てることになりました。ランテングⅠの地区長であるスカンダーさん(39)は、「ランテングⅠをより良い地区にしたい!」という熱い思いを抱いて2008年、当時28歳で地区長に立候補し、村内で一番若い地区長となりました。地区長に就くと60歳になるまで役職を全うするのが決まりだそうです。セロ村では、毎年政府に村への支援要請を行っています。その度にコミュニティセンター建築のリクエストを提出していましたが、道路整備や川沿いの防波堤の設置などのインフラが優先され、要請が受理されることはありませんでした。そのため、スカンダーさんが地区長になってからは、自宅を開放してコミュニティ内の集会を行ってきたそうです。カリダダブⅡも同じような状況にあり、地区長のパピンさんはコミュニティセンター建築を3年待ったそうです。

コミュニティセンターの用途は多岐にわたります。まずは村民が集まり、村のことを話し合ったりする集会場所として使われます。こうした集会以外にも、月に一度、女性グループと男性グループが別々に集会を行います。集会以外には、インドネシア政府が推奨する「Posyandu(ポスヤンドゥ)」と呼ばれるヘルスプログラムを開催する場所として使用が予定されています。このヘルスプログラムは0~5歳の乳幼児を持つ母親へ子供用のサプリメントを配り、子供の栄養教育、健康管理について教えるクラスです。村内には、若い年齢で結婚し、暮らしが豊かでない中子どもを産む母親も多く、体が小さく成長が遅い子どももを減らすためにヘルスプログラムが必要とされています。こうしたプログラムは60歳以上の高齢者に対しても行われ、自身の健康管理について教えているそうです。また、インドネシアには「skilled training (職業訓練)」と呼ばれるものがあります。これは、大学で専門分野を学んでいる4年生が、自分が学び得た技術を他の人に伝授するものです。女学生は伝統工芸のバティック染色や裁縫を教え、男子学生は肥料の正しい使い方やココナッツ木炭の作り方など、農業関連の技術を教え伝えます。正しい技術を身に着けずにこうした職業に就く中年層も多いため、きちんとした技術を学ぶ機会になる職業訓練は有効だと言われています。その他にも、コミュニティ内の子どもたちに伝統舞踊を教え、練習する場として使うことなども予定されているそうです。

地区長のスカンダーさんは、ハビタット・ジャパンがコミュニティセンター建築の支援まで行ってくれるとは思っていなかったので、日本から学生が来て、実際に建築活動に参加している様子を目の前にして、この気持ちは言葉に表せないと話してくれました。パピンさんはハビタットから支援を受けた家族の多くは、自身の住居について頭を悩ますことがなくなったと話します。コミュニティセンターの建築が完了するのは4月末頃を予定しています。住民が望んできたコミュニティセンター建築の夢が実現することで、住民が協力し合い、学び合う場が人々の更なる健全で豊かな生活を営む機会に繋がることを期待しています。

 

※セロ村の建築支援にあたっては、活動に参加くださった50名の学生ボランティアをはじめ、Shanti Shantiボランティア愛好会、上ヶ原ハビタット、その他の団体によるご寄付で実現することができました。活動をお支えくださった皆さま、ありがとうございました。