「片づけたいけど、体が動かなくて」そう申し訳なさそうに話すのは、都内在住の72歳になる内山さん(仮名)です。今暮らす1Kの賃貸住宅に入居したのは約30年前。当時はあまりある体力を使って、雪が降れば住宅周辺の雪かきを積極的に行うなど地域に貢献してきたそうです。現在は数年前に患った脳梗塞の後遺症のため体の一部に震えがあり、体力はかなり衰えてしまったそうです。けれど、これまでの地域の方との交流は今も続き、内山さんのお宅を訪問するとご近所のご友人と世間話が弾んでいるようでした。

内山さんは、部屋の片づけについて担当のケアマネージャーへ相談したところ、ハビタットの国内居住支援活動を紹介されたそうです。無償での清掃ボランティアに疑念を抱く方もいる中、内山さんに最初の印象を伺うと、若いころにご自身もキリスト教関係団体のご友人とのご縁から、ホームレスの方への炊き出しをお手伝いしたことがあったため、抵抗なく清掃ボランティアへ依頼をしたいと思ったそうです。「まさか自分がこんな形でお手伝いいただく日が来るなんて」そう話していました。

秋晴れとなった10月17日、メットライフ生命から集まった9名の社員ボランティアによる協力のもと、内山さんのお宅の片付けを行いました。10年近く掃除できていなかったことを物語るように、居室内は物に溢れている上、家財や壁には埃が厚く積もっていました。チームが現場に到着すると、内山さんは若いころに習得した英語で外国人ボランティアの方に挨拶するなど、快くチームを受け入れてくださいました。作業の前にチームが現場を確認。まずは何を破棄していいのかご本人へ確認を行うと、写真以外のものは捨てていいと話します。今回お掃除を依頼した背景をより深く伺うと、内山さんからは「終活のため」という言葉が聞かれました。年齢とともに身の回りを整理したいという思いを抱き始めたそうです。「どれもこれにも未練があって、そうなったら終わり。未練がないようにしていきたい。ただ写真は思い出。若かった日を映してくれている」と話します。

半日の作業が終わる頃には、パソコンを楽しむ居間の片付けがほぼ終了しました。英語の勉強に役立てた大量のビデオを捨て、台所をお掃除しました。若い頃は料理雑誌に取り上げられるほどお料理が上手だった内山さん、油と埃、水垢がこびりついた台所がボランティアの手により生まれ変わりました。「火はあぶないから使えないけれど、電子レンジが使えるようになったからお弁当と温められる」そう話してくれました。

  • Before

  • After

寝室の清掃は、古くなったお布団セットの交換とお布団周りの片付けを行いました。布団交換時にベットのフレームが破損していることが判明。急遽ベットのフレーム、また台所の棚もDIYで今後も使えるように修繕しました。

この10年、内山さんにとって住まいはただ寝るだけで、人が住んでいる佇まいではなかったそうです。ボランティアにより部屋が片づけられていく様子を見守りながら、何度もボランティアの方に「ありがとうございます」「助かります」そう言葉をかけてくださる内山さんが印象的でした。
ハビタットでは引き続き内山さんのお宅のような片付けの手伝いが必要な方のお宅の清掃にボランティアと取り組み、きちんとした住まいの実現に取り組んでいきます。

※現在ハビタット・ジャパンでは、森村豊明会の助成を受け、お困り方へ布団セットの配布を行っています。