2018年3月11日で、東日本大震災より7年がたちます。ハビタット・ジャパンでは震災直後から2015年まで岩手県と宮城県で活動してまいりましたが、その意思を継ぎ、現在も全国からキャンパスチャプター(学生支部)の学生たちがボランティア活動のため、また震災を忘れずに後輩へと伝えていくため、東北を訪れています。 宮城県仙台市にある東北大学のキャンパスチャプターAs Oneは、2017年9月から宮城県石巻市にある大森仮設第4団地(大森仮設)を定期的に訪問し、コミュニティ支援を行っています。大森仮設は4団地からなる石巻市内でも比較的規模の大きい仮設住宅です。しかし、2018年の8月で閉鎖となることもあって、現在は十数世帯しか入居者がいない状況です。また、第4団地の自治会もこの3月で終わりとなります。仮設住宅にお住いの方々と交流することでお互いに楽しい時間を共有しつつ、そのコミュニケーションの中に、現在のニーズを知り、その後の活動を継続できるように取り組んでいます。
こうした学生たちの活動にご協力くださっている住民のお一人、大森仮設自治会の会長である生出さん。学生たちの企画を快諾してくださり、温かく迎え入れてくださいます。「仮設で暮らす人たちが閉じこもらないようにと考え、ボランティアを積極的に受け入れたり、仮設に住む人同士でのお茶会を日常的に行ってきました。しかし、震災の影響で気持ちが不安定になっている人が多かったうえに、様々な地域から人が入ってきたため、自治会の活動に関して理解しあえないことも多々ありました」と語る生出さん。例えば、仮設住宅イベントを行うために助成金を申請しているにもかかわらず、それを知らずお金の使い道について生出さんに不平を言う人もいたとのこと。それでも生出さんは、「私たちにはボランティアさんの力が必要だから」と言ってくださいます。「仮設の人はわざわざ遠くから来てくれるボランティアに感謝をし、ボランティアの人は温かく迎え入れてくれる仮設の人に感謝をする。この両方がなければ良い関係は築けないし長続きもしない」と語る生出さんの言葉に、学生ボランティアたちも強くうなずいていました。
その後学生たちは、住民のお一人である峰井さん宅を訪問しました。3年前にご主人を亡くし、現在は単身で仮設住宅で暮らす峰井さんは「合理的に生きなさい」と学生たちに伝えます。「大森仮設には様々な地域から避難してきた人が入居して、また一からコミュニティを作らなければいけませんでした。当時はお互いの悪口を言い合う人たちがたくさんいて…」被災されて心の余裕がない状況で、仮設住宅という借り暮らしの場所で生活されてきた峰井さんの心情は計り知れません。しかし、「自分は人の悪口は決していわないようにしよう!」と決め、努力されてきた峰井さんの、「自分の信念(道理)をもってそれに合うように生きる」という言葉は、学生ボランティアたちの心に強く響きました。
震災から丸7年となり、仮設住宅が徐々に閉鎖され、公営住宅や新居に移転していく人が増えてきています。きちんとした住まいに入れることは復興が進んでいる証でもある一方で、避難所、仮設住宅、公営住宅と次々に環境が変化することでコミュニティの形成が困難になっています。復興が進むにつれてボランティアの形は変化していきますが、現在でもできること、やるべきことはたくさんあると、ボランティアとして参加した那波多目健太さんは語ります。「大森仮設にボランティアをしに行くことで、ボランティアとは何なのかについて考えさせられ、その本質に気づかされました。『人のためになるようなことをしなさい』というようなことを何度も言われました。『合理的に生きなさい』『感謝の気持ちを忘れてはならない』これらの言葉はどれもボランティアの本質をとらえた言葉ではないでしょうか。そして、これらは心の中に誰もが持っているはずのものです。しかしながら、私たちが普段見落としがちになってしまうものでもあります。こういった部分に気づかせてくれるのが今の東北なのではないかと思います。ボランティアをする側の人間として、いわゆる『善いこと』ではなく真に『人のためになること』をしなくてはならないと改めて感じました。」
「人のためになること」という言葉を胸に、これからもキャンパスチャプターの学生たちは東北でボランティアを続けてまいります。