それでも霧の濃い朝は、しとしと降る音がする。雨ではない。木の葉に結露した水滴が
したたり落ちるのだ。音だけは雨が降っているように聞こえる。
枝をのばしている木の下にいると降り、そこからでると降っていないという珍現象を発見して首をかしげたものだ。
濃霧のため、10メートル先もみえない。屋上にあがると、遠くの田や畑に霧がおりて、淡い水墨画のような幻想的な世界。昼間には、そこにヤギや羊がでて草を食んでいる。
ダッカからここブアプールに来て暮らしはじめた1ヶ月と1週間前に、鼻風邪をひいて咳こんでからというもの、オーバー着用があたりまえになってしまった。
地図で確かめると、ここは石垣島と緯度が同じくらいだ。わたしは4年前の今ごろ、沖縄のNGOで仕事をしていたが、ダッカの北80キロにあるこの地は、那覇よりも少し涼しいくらい。曇っていた昨日とは対照的に、今日は晴れ。ベットに敷いているマットレスを干した。
オフィス兼居室の自分の部屋の裏窓からは、隣家の庭がみえる。天気のいい日には、そこの家族が日なたぼっこをしている。ふと見ると、1個だけ置かれた木製のイスの背もたれに鶏が3羽とまってじっとしている。さかんにヤギの鳴き声も聞こえる。
車に乗っていると、あちこちの田んぼで数人が手分けして田植えをしているのが散見される。春の兆しであろう。
(1月22日)