ハビタット・フォー・ヒューマニティ(以下HFH)は、ハウジングに関する経験を生かして、住宅に関するマイクロファイナンスと、その技術的支援を通じてパートナーの能力開発にも焦点を当てています。HFHベトナムでの事例を紹介します。
2005年にHFHベトナムは、キエンザン県の女性組合との共同プロジェクトとして、マイクロファイナンスによる住宅プログラムを試験的に行いました。このパイロットプログラムでは、10ヶ月間に4地域800家計に住宅ローンを提供しました。このローンは、水道、衛生施設の改善はもとより家屋自体の補修の資金となりました。ローンの金額は75ドルから280ドルで、最長36ヶ月の返済条件で提供されました。HFHベトナムは、このローンのファンドマネジメントを行っている女性組合に対しマイクロファイナンス運営のための技術支援と組合員へのトレーニングを中心に支援を行いました。
このプロジェクトを成功させるための鍵は、正しいパートナーを選択することにあります。HFHベトナムがパートナーとして選んだ女性組合は、貧しい人々と共に働き、他のグループとのネットワークを持ち、開発ファイナンスを経験したことがありました。またこの組合は、現地の人々の日々の暮らし、家計の支出・収入サイクルに関する知識を持っていました。さらにこの女性組合は、ベトナム政府傘下の組織のひとつであり、各県で活動していることから持続的活動が確保されていました。
このような特徴を持つパートナーとの共同プロジェクトにおいて、HFHベトナムの主要な役割は、住宅ファイナンスの商品を組合員と一緒に考え、そのような商品を提供する際の技術的側面であるマネジメントとトレーニングを提供することでした。さらに女性組合がファンドを運営する能力を高め、HFH以外の資金を集めることを助けることも大切な役割でした。
2006年7月に、このパイロットプロジェクトのファンドマネジメントとパフォーマンスに関して監査が行われました。監査の結果は、「ローンはそれぞれの家計の必要を満たす金額であり、また借り入れた家計が十分に返済できる額である」というものであり、このプロジェクトが短期間において多くの家計にとって有益であったという信念を強めるものでした。
またこの監査から、このようなマイクロファイナンスのプログラムを他のコミュニティーに拡張し、他のパートナーと活動する際の重要な課題が明らかとなりました。ひとつは、女性組合の会計と財務報告書に関するキャパシティーが限られていたため、HFHベトナムによるモニタリングが、財務管理とファイナンスのシステムがうまく機能するために欠かせないものであったということです。もうひとつは、ファイナンスの規模が拡大すると、ファイナンスを運営するキャパシティーも拡張させる必要があり、結果として、運営を持続的に維持するためには、利子率の引き上げまたはHFHインターナショナルからの継続的な助成支援等が必要になるということです。
現在HFHベトナムは、衛生設備の改善と住宅建設促進のため、キエンザン県において新たなパイロットプロジェクトを立ち上げています。今回パートナーを組む組織は、これまで国際非営利団体とのパートナーシップを結んだ経験を持っていません。HFHベトナムは財政マネジメントシステム、プロジェクトマネジメントシステムの開発などを通じて支援していく予定です。
HFHは、政府の補助金、民間の金融業者ではカバーすることのできない領域で活動を行っています。他の重要なプレーヤーの参加を促し、一緒に活動することでHFHが単独で活動する場合よりも、より多くの家計を助けることが可能となっています。
ベトナムにおけるマイクロ・ファイナンス・プログラムの事例より
2007/07/13