こんにちは!ハビタット・ジャパンの稲垣です。先日、以前に宮城県女川町に縁のある、私にとっては懐かしいお二人とお話しする機会がありました。復興について、支援についてあらためて考えるきっかけになったので、ここで共有しますね。

私は2011年夏から2年間、宮城県に駐在し、復興支援事業を担当していました。未曾有の災害が起きた場所で、復興が何を意味するのか、ひとつの団体で何ができるのかわからないまま、ただ必死に、目の前のできることをなんとか進める毎日でした。そんな中で出会ったのが、八木純子さんです。

八木さんは、女川町の小さなコンテナで、地元のおばあちゃんたちと布草履を作っていらっしゃいました。聞けば、自らも被災し、避難所で小さなお子さんを抱えるお母さんたちを支えることからはじまり、その後も色々な形で、周囲の人たちを助けているとのこと。八木さんの元には、ボランティア、支援団体のスタッフ、地元の方たち、色々な人がやってきて、とにかく忙しそうで、パワーのある人だなぁと圧倒されてしまいました。忙しい中たくさんのお話をしてくださり、ついには、八木さんが育ったご実家まで連れて行ってくれました。その家は、津波被害が大きかった女川高白浜のすぐ横。その時には、周りには他に何の建物もなく、工事車両がたくさん置いてあるだけでした。海の目の前なのに、奇跡のように残った建物。ボロボロだけど、傾いてもいない。2階には、少しだけど家具や小物が残っていて、八木さんが育ったころの空気もまだ漂っているかのようでした。窓を開ければ絶景の海!この建物と八木さんのパワーがあれば、ここにどんどん人が集まってくるように感じました。八木さんもそれを願っているようでした。ついその場で、建物を直す提案をしてしまいました。

そこからは、もうそうなることは決まっていたように、話が進みました。ハビタットだけではどうにもなりません。様々な人たちの助けを得て、本当に建物の改修が決まりました。

その後、私自身は宮城を離れてしまったのですが、八木さんのご実家を地域の憩いの場として再生するプロジェクトは、他のスタッフが引き継いでくれて、その後、無事に「ゆめハウス」として、とても素敵な場所が生まれました。

ハビタットはその最初の一歩を少し後押ししただけ。実際に人を集め、運営して、素敵な場所に変えていったのは、八木さんをはじめとする地元の人たち、それを応援する様々な人たちです。

先日、横浜で八木さんが登壇するイベントがあると聞いて、(しかも東北の美味しいお酒とごはんもあると聞いて!)、ワクワクしながら足を運びました。

八木さんは今も、前に進むために懸命に働かれています。前に進むと言っても、ひとりで突っ走るのではなく、地元のおじいちゃんやおばあちゃんたちの手を取って、少しずつ少しずつ歩んでいる感じ。それをするために、見えないところで猛烈に事務仕事や様々な手続きをして布石を敷いておられると思います。数年ぶりにお会いして、たくさんお話しをしたら、八木さんが元気なことに安心し、そして私もまたパワーをいただきました。同時に、八木さんのお話しに出るのは、ニュースで見聞きするのとは違う今の女川の本当の姿。女川駅が再生し、立派な駅舎と温泉施設、海まで続く新しい商店街ができました。電車の運行も再開し、多くの人が足を運ぶようになりました。毎日のようにイベントが開かれ、観光客でにぎわいます。しかし、地元の人たちの心には、喜びと同時に、戸惑いもあるようです。めまぐるしく変わる街の変化についていくのは大変なことなのだと思います。

そんな女川の「今」を、現地で間近に見ながら、支援活動をしている若者がいます。ハビタットのキャンパスチャプター東北大学As Oneの代表を務め、その後、インターンとしてゆめハウスで働いている高田俊智さん。高田さんが、女川で過ごし、八木さんと働く中で感じている今の思いをおしえてくれたので、少し紹介しますね。

「八木さんと色々と関わってきて、学んだり、感じたことはたくさんありますが、一番良かったと感じているのは、『自分を叱ってくれる存在がいる』ことです。今までの大学生活で、肉親以外でそういう人はいなかったし、ましてや東北支援やそういう分野で意見をぶつけたり、しっかり甘いところ等を追及してくれる人がいなかったので、そこが最も良かったなと思うところです。」「女川に限らず、多くの被災した自治体に外部からたくさんの人や団体が入ってきていて、そこと元々いらっしゃった地域住民の方々とがうまくいってるところとそうでないところがあります。ただ両方とも、それぞれの『復興』を目指して活動していく上で大事なのは『だれもおいてけぼりにしない』ことだと思います」

災害後の支援においても、貧困解消を目指す国際的な活動においても、誰かのために何かするときには共通して大事なこと。それは、寄り添うこと、そして、誰も置き去りにしないこと。ハビタットで働く中で、それができているか、常に自分に問いかけています。八木さんや高田さんは、女川でそれを大切にし、実践しているのですね。高田さんのように、支援のバトンをつないでいる若者がいることは、ハビタットにとって大きな支えです。高田さんは、女川での出会いがきっかけで、この夏はアメリカでの研修ツアーに参加したとのこと。

ハビタットの活動をする中で生まれた想いは、こうして、人から人へつながれていくのだな、と私たちを支えてくださるすべての方への感謝を新たにしました。