2月23日に女性のためのシェルター清掃に訪れたハビタット・ジャパン学生インターンの法橋さんが感想を書いてくれました。 ― 貧困や災害だけが住まいの問題を引き起こす要因ではない。― 身近な問題に目を向けることの大切さに気付いたようです。

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 こんにちは!ハビタット・ジャパンでインターンを務める法橋です。今回私はハビタット・ジャパンの学生支部(キャンパスチャプター)に所属する皆さんと一緒に女性のためのシェルターを訪れました。

ハビタットでは海外の貧困地域で家を建てる活動や災害後の住まいに関わる支援など行っていますが、貧困や災害だけが住まいの問題を引き起こす要因ではありません。私たちの身近なところにも、恋人や配偶者からの暴力(ドメスティックバイオレンス)などをはじめ、様々な事情により行き場がなくなった方、家に帰ることができなくなった方がいます。そのような女性やその子ども達を一時的に保護する施設が女性のための緊急一時保護施設、女性のためのシェルターです。シェルターでは、まず安全にそして安心して滞在できるよう、3度の食事とプライバシーが確保できる宿泊の場を提供し、入所している女性や子ども達の状況に応じて、退所に向けたサポートを行います。

今回私たちは、ハビタットを通じて、シェルターの一つをきれいにするボランティアを行いました。施設到着後、まず職員の方に、施設について、そこで暮らす方々が抱える問題などについてお話を伺いました。その後、一日かけ施設内のお掃除を行い、最後にその日感じたこと、抱いた思いを振り返り、職員の方を交えて共有する時間を持ちました。

 施設に保護されている方が抱える問題の一つ、DVについては、私の通う大学の講義で学んだことがあり、問題についての知識を少し身につけていました。しかし、この問題を身近なこととして捕らえるには、想像もできないものだと感じていたので、施設を訪問するにあたり、DVという繊細な問題だからこそ自分が気を付けるべき言動があるのではないかと考えボランティア活動に挑みました。日本という先進国の中で、経済的な問題に限らず、暴力という脅威によって安心して暮らすことのできない方々、その中には私たちと同じ世代の方もたくさんいらっしゃいます。そのような方にとって、毎日とくに大きな心配や脅威もなく暮らしている私たちがボランティアに訪れ、自分たちの暮らしている場所を掃除する、それはその施設で暮らす方々にとって本当にプラスになることなのだろうか、人との関わりの中で傷ついた方にとって、自分が安心して暮らす場所に知らない誰かがやってくることは逆によくないのではないか、そんな心配を抱きながら活動にあたりました。実際に、私がお手洗いを掃除している時に、そこに遠慮がちに入ってくる入居者の方もいらっしゃり、不必要な気を遣わせてしまっているのではないかと、とても心配になりました。これは私だけでなく、このボランティアに参加したメンバー全員が同じ不安を抱えていたことがわかりました。

この気持ちを、振り返りの時間に施設職員の方に伝えてみたところ、「パートナーや、周りの人に大切にしてもらうことができず、傷ついてしまった人にとって、自分のために掃除をしにきてくれる人がいると知ることはとても大切なこと」、「社会との関わりが少なくなってしまっているこの施設の方にとって、外から新たな人がやってきて、社会と関わりをもつことは、被害から立ち直り、社会復帰して暮らす際に必要なこと」、そうお話をしてくださいました。また、「様々な事情により安心して暮らせる場所を失い、たどりついたところがもしも汚い場所であったら、その方たちは『どうせ私にはこんな場所しかない』と感じてしまう。だからこそ、シェルターをちゃんと掃除してきれいに保つことは、とても大切なことです」、と伺うことができました。

 安心して暮らせる、きちんとした場所を必要としているのは、貧困や、災害に苦しむ人だけでなく、こんなに身近にいるということ、そしてそのような方たちのためにできることが私たち学生にもあるということを今回のボランティアを通して知ることができました。施設の方からは「また機会があればお手伝いに来てください」とのお言葉をいただき、一日の活動を終えました。今後、こういった問題を少しでも多くの人に伝え、自分自身もこの活動を続けていけたらな、と思っています。