私は、成蹊大学に通う大学4年生、高嶋秀 です。初めてハビタットの海外建築ボランティア「グローバル・ビレッジ(GV)」に参加したのは、大学2年生のころ。東南アジアの開発経済学を専攻していることもあり、発展途上国が直面する現実を自身の目で確かめたいという強い思い、また、小学1年生の頃に福島県で東日本大震災を経験し、仮設住宅での生活を余儀なくされた方々の姿を目の当たりにしたことで、「家」という生活の最も基盤となる支援に携わりたいという思いを抱き、GVに参加しました。
初めての海外渡航となったGVでは、インドネシアのジョグジャカルタを訪れました。異文化・異言語の環境の中で生活することは初めての経験であり、全てが新鮮であり、自分の価値観が大きく揺さぶられる日々でした。建築支援地となるコミュニティに足を踏み入れると、「日本における当たり前」は決して世界の当たり前ではないことを痛感したことを今でも鮮明に覚えています。私たちにとっては、家の構造が安全とは程遠い上に、衛生設備が整っていないなど、厳しい住環境に見える一方で、そこに暮らすホームオーナーとなる家族は常に温かく、笑顔で私たちチームを迎え入れてくれました。そして約5日間の建築活動を通じて、信頼が築かれ、休憩中に交わした言葉や笑いは、国や文化の違いを超えた深いつながりを実感させてくれるものであり、私にとってかけがえのない思い出となりました。
「いつかあの時の家族に会いたい、あの時にお世話になったハビタットのスタッフと再会したい」そんな想いを抱く中、大学最後の夏を迎え、2度目のGVにリーダーとして参加することを決意しました。リーダーを選択した理由の一つは、これまでの経験を生かすことで、チームメンバーや現地の方々に対してより良い影響を与え、本質的で持続可能な支援に少しでもつなげたいという思いからです。二つ目は、大学4年生である私自身が、自らの役割として、次世代を支える後輩たちにこの活動を継承していく責任を感じました。
初めてのチームリーダー、戸惑うことはたくさんあったけれども、「私自身が楽しむ」をいうことを大切に渡航に向けて準備を進めてきました。そして、計9名でインドネシアを訪問。現地に到着早々、早速再訪の願いでもあったハビタットのスタッフとの再会が叶いました。
インドネシアのGVでは、チームをサポートしてくれる現地コーディネーターが滞在期間中常に帯同してくれます。私たちのコーディネーターには、2年前と同じ、ハリさんがついてくれました。ハリさんと再会することができ、非常に懐かしく、安心感を感じたことを覚えています。そして迎えた建築初日、今回支援することになったホームオーナーさんは、ラトモさん一家です。小さなお子さん2人を抱える4人家族です。現在のお住まいは、コンクリートと竹で建てられていましたが、前回のご家族同様、家の構造は脆く、トイレや浴室が屋外に設置されているなど、生活の不便さだけでなく、安全面にも不安を抱えた生活であることが伺えました。
こうした家族の現状を知ることで、チームメンバー一同、建築支援の大切さを感じる中で活動をスタートすることができました。活動は、家族を風雨や外敵から守る壁を建てる上で欠かせない、支柱の製作と組み立て、また家の土台となる基礎やブロックを積み上げていく上で欠かせないコンクリートを大量に作るために、セメントなどを練り混ぜる作業、そしてブロックやレンガを家まで運搬し、積み上げる、こうした3つの工程を日々繰り返し行いました。作業現場の周囲には木々が多く生い茂り、足元の状態は良好とは言い難い環境でしたが、ハビタットのスタッフを中心に、安全面に細心の注意が払われ、安全に作業を進めることができました。休憩するためのスペースは、ハビタットが用意してくれていましたが、ホームオーナーさんご自身もご好意で休憩スペースを用意してくださった上に、軽食や飲み物を振舞ってくださるなど、私たちチームへの温かい心配りを感じました。ご好意に甘え、休憩中はホームオーナーさんとの交流を楽しみながら、十分な休息を取り、体調を維持したうえで活動を継続することができました。
活動の合間には、二つ目の願いであった、2年前のホームオーナーさん、マルジョさん一家のお宅を再訪することができました。残念ながらマルジョさんは療養中のため不在でしたが、奥さんのンガティラさんと再会することができました。私は当時リーダーという立場ではなかったため、果たして相手が私のことを覚えてくれているのか、再会してもあっさりとしたやり取りで終わってしまうのではないかと、不安や緊張を感じていましたが、再会すると私を思い出してくださり、喜びから涙を流されていました。その姿を見た瞬間、私の中に強い感動が込み上げてきました。自らが建築に携わった家が完成し、その家に移り住んだンガティラさん一家の生活ぶりを見て、直接話を伺えたこと、同時の写真を見返して、一緒に懐かしんだ一時は、今後の人生においても決して色褪せることのない記憶として刻まれていくと確信しています。
そして、今回のGVでホームオーナーとなったラトモさん宅での活動最終日、ラトモさんからも満面の笑みで「ありがとう」という言葉をかけてもらいました。その感謝の気持ちは、チームみんなの心に深く響きました。活動を通して、チームメンバー全員が常に笑顔でいられたことや、休憩中や作業後に子どもたちと触れ合い、言葉を超えて心を通わせる時間を持てたこと、そして何より、ンガティラさんを再訪したことで、改めて自らの行動が、誰かの人生に確かな影響を与えることができたという実感を見て感じられたことは、何にも代えがたい貴重な財産になりました。こうした一つひとつの瞬間が心に深く刻まれ、二度目のGVは私にとって本当に意義深いものであり、GVは家を建て、人とのつながりがより良いコミュニティを築く、持続可能な支援になっていることをメンバーに示す機会になりました。
こうして二度のGVを経て学んだことは、当事者意識を持つことの大切さ、そして自分の行動が誰かの人生に影響を与えることができるということです。これから社会人として新しいステージに進む中で、社会の中で学び得る立場から、社会に還元する立場へと成長していくために、たゆみなく相手の立場を理解する姿勢を持ち、誰かの人生に良い影響を与えることができる人間に成長していきたいです。
GVへの参加は学業に追われる中で時間を作ったり、渡航に必要な費用を貯めたりと、学生にとっては大きな挑戦でしたが、こうした経験をぜひ一人でも多くの学生が体験できることを願っています。