ハビタットの国内居住支援「プロジェクトホームワークス(PHW: Project HomeWorks)」は、ご高齢の方や障がいをお持ちの方など、ご自身では居室を片付けることが困難な方を対象に、居室内の環境改善を目指して清掃・片付けを行う支援です。支援対象者となるホームパートナーさんの中には、ご高齢であることや障がいを持つこと以外にも、ご自身での片付けが困難となる特性を持たれている方が多く、活動時にはそれぞれが持つ特性をボランティアさんに理解いただいた上で、お一人お一人の特性に寄り添った支援を心がけています。

今月活動を終えた黒崎さん(40代)も、片付けを行う上で配慮すべき特性が見られました。黒崎さんは、精神疾患を抱えながらもお一人で小学生のお子さんを育てるシングルマザーです。お子さんが落ち着いて学習できる環境を整えたいというご希望から、ハビタットに相談が寄せられました。そこで1月、黒崎さんのご自宅を下見のため訪問すると、部屋の中には2つの本棚に詰め込まれたたくさんの学習教材をはじめ、おもちゃや洋服が散乱している状態でした。また、台所もモノに溢れ、ご自身の体調と向き合いながら日々子育てに奮闘されている様子が垣間見られました。

支援実施を決定してからこれまでの計4回、黒崎さんのお宅で片付けを進める中で、黒崎さんが抱える特性が見えてきました。その一つが、些細なことに対しても「判断」することへの心理的な負担が大きいということです。PHWの活動では、必要なモノの処分については、ご本人に判断をゆだねています。しかし、黒崎さんは「聞かれてもわからない」と回答することが多く、質問されることに対してストレスを感じられているようでした。こうした特性に気づいてからは、質問の仕方や頻度を変え、ご本人の決断を後押しするような情報を加えて、まとめて質問するなど、工夫して活動を実施してきました。

二つ目の特性は、手続きが極端に苦手であるということです。居室には、中古店に出すための本や洋服が詰められた段ボールが何箱もあるほか、粗大ごみで廃棄する不用品が長年放置されていました。ご本人に伺うと、「粗大ごみや本の引き取りを手配するのが苦手で、その先に進めないんです」と教えてくれました。そこで、粗大ごみの手配や搬出はPHWの活動としてお手伝いできることをお伝えし、不要なモノの処分をお手伝いしました。

こうした特性に配慮すると、黒崎さん親子が安心安全に暮らせる生活環境を維持するためには、定期的な生活援助が不可欠であることが伺えました。とある日、活動のためボランティアと黒崎さんのお宅を訪問すると、ご本人は体調を崩して横になられている状態でした。活動の延期を提案したところ、その日は手が回らない生活面をサポートしてほしいとの相談を受け、ボランティアさんの快諾のもと、キッチンのシンクに溜まっていた食器を洗い、洗濯機の中で放置されていた洋服を干すなど、日常の家事をお手伝いしました。そこで、こうした黒崎さんの特性や生活実態を担当の福祉相談員に伝え、生活援助の必要性を訴えたところ、今月から週1回、部屋の掃除や洗濯、ゴミ出しなどのサポートを受けられるようになりました。そこで、今後は、黒崎さんご自身で少しずつ片付けを進めて行かれることを希望され、ハビタットの支援は、生活援助につなぐことで今月をもって完了となりました。

ハビタットに寄せられるホームパートナーさんは、何らかの「特性」、そしてその特性ゆえに「生きづらさ」を抱えている方がほとんどです。誰もが安心安全に暮らせる住まいを持てるよう、ハビタットはホームパートナーさん一人ひとりが持つ特性を尊重し、理解あるボランティアによる協力のもと、引き続き住まいの支援に取り組んでまりいます。清掃・片付支援は皆さまによるご支援に支えられている活動です。活動へのご支援はこちら。またボランティアとしての参加はこちらをご覧ください。