ハビタットの国内居住支援「プロジェクトホームワークス」の清掃・片付け支援にお寄せいただく相談の約半数は、65歳以上の高齢者世帯です。その多くは単身世帯で、ご自身では改善が難しい居室についてのご相談が地域の福祉団体を通じて寄せられます。4月にケアマネジャーの方より相談を受けて、5月に支援を実施した牧野さん(仮名)も、単身で暮らす80代の方です。

30年以上前にパートナーの方が先立たれて以来、牧野さんはずっとお一人で暮らされています。しかし、年齢と共に徐々に足腰が弱くなり、次第に家にいる時間が増え、多くの時間を古く硬くなった布団の上で過ごすようになりました。立ち上がりが少しでも楽になるようにと、介護ベッドの設置を考えたそうですが、そのスペースをご自身で確保することができないため、導入を諦めていたそうです。

牧野さんの支援では、家具を移動し、介護ベッドを置くスペースの確保が目標です。活動当日、ボランティアによる協力のもと、まずはタンスの中身を出していくことから始まりました。タンスの中には、長年愛用されてきたことが伺える洋服がきれいに収納されていました。「若い時には、どんなお仕事をされていたのですか」と伺うと、「美術品関係の仕事をしていた」と話し、良い仕立てがされた洋服や骨とう品を今でも数点大切に保管されていることや、お仕事を通して培われた美術品の見方などを楽しそうに教えてくださいました。

タンスの中身を全て出しきり、移動するために持ち上げてみると、ずっしりと重く、運ぶのも一苦労です。ボランティアさんとスタッフが、声を掛け合いながら、慎重にタンスを隣の部屋に移動させると、寝室には介護ベッドを設置する十分なスペースが生まれました。そして、活動はタンスの中身を戻して完了しました。

活動を終えると、担当のケアマネジャーさんから「牧野さんのように、ご高齢となられても、施設に入居せず、長年暮らしてきた家に住み続けたいというご希望をお持ちの方は、地域に多くいらっしゃいます。そうした方が少しでも長くご自宅に住み続けるためにも、居住環境を整えるお手伝いを頂き大変ありがたいです」とのお声を頂きました。ハビタットは、誰もが安心して暮らせる地域で生活が続けられるよう、引き続き清掃・片付け支援に取り組んでまいります。