2月より、金沢などの建築士ボランティアと協力して、被災家屋の建物相談を行っています。「被災した家屋に修理して安全に住み続けられるのだろうか」、「修理する方法はあるのか、もしくは解体した方がいいのか」、住民の方が抱える不安や心配が少しでも軽くなれるよう、建築士と共に被災家屋を訪問し、専門的な視点から被災家屋に関する客観的なアドバイスを行い、住民の方が住まいの選択肢を広げ、今後の住まいの方針を一緒に考えていくという取り組みを行っています。

門前町でも、被災家屋の公費解体が少しずつではありますが始まりました。この能登半島地震においても、罹災証明の判定が半壊以上である家屋は、希望をすれば公費解体の対象となります。先日いただいたご相談のお電話では、修繕して住み続けようと考えていたそうですが、「半壊」という罹災証明を受け取ったことで動揺され、もうこの家には住み続けられないのかと悩まれたそうです。住民に誤解を招きやすいのが被災家屋に対して出される「応急危険度判定」による赤紙、黄色紙、緑紙の判定、そして外観調査のみである「罹災証明」の一次判定です。応急危険度判定は発災直後に行われるもので、「人命に関わる二次災害を防止する」ことを目的とし、罹災証明は「被災家屋の被害程度を表す」ものであり、どちらも家の中に入って詳しく被害状況を見るわけではないので、専門的な視点から被災家屋が修理できる状態か否かの判定ではありません。しかし、これらの判定結果に戸惑われている方が多く見受けられます。建物相談を受けた住民の方からは

「傾いていると思ってたから、建築士さんに見てもらえてひとまず安心した。それまではこのまま住んでいても良いのか怖かったから」

「壊すしかないと思っていました。これまで守ってきた家なので、解体だけではなく、修繕する選択肢をもって、じっくり考えてみようと思います」

といった声が聞かれました。こうした建築士による建物相談は、今後、修繕か解体かの決断を迫られるなか、他の地域でもニーズが高くなっていくことが予想されます。

また、建物相談を行っていく中で見えてきたのは、余震で家屋の被害がさらに大きくなったり、家屋の一部が崩れる危険性があるなど、家屋の片付けをする住民やボランティアにとって、二次被害を招きかねない家屋が散見されたことでした。

建築プロンティアネットは、少しでもその危険性を和らげるために、建物相談を行った家屋を中心に、被害の進行を抑えるための応急措置に取り組んでいます。建築士の視点と大工の技術を合わせ、外壁の留めなおしや、歪んだ梁に金具で補強を行う、外れたほぞを戻すなどの他、家屋の周辺を通行する人の二次被害を防ぐために、瓦が落ちる危険性などを注意喚起するカラーコーンや警告テープを設置しています。

建築プロンティアネットでは、こうした建物相談の他地域での展開や、応急措置を実施していくため、にクラウドファンディング(こちら)を立ち上げました。建物相談を通じて一人でも多くの方が住まいの選択肢を広げ、抱える不安や心配が軽減されるよう、ハビタットでは引き続き、住民と建築士との繋ぎ役を果たしながら、建築プロンティアネットによるクラウドファンディングの実施を応援しています。

 

輪島市門前町で取り組むハビタットの被災者支援活動は「赤い羽根「災害ボランティア・NPO 活動サポート募金」(ボラサポ)の助成を受けています。