能登半島地震で甚大な家屋被害を受けた石川県輪島市の門前町地区は、海と山に囲まれた過疎化が進む地域です。先日、門前町にある標高の高い山間部の集落に暮らすMさんのご自宅で、ブルーシートを張りを実施しました。

Mさんと出会ったのは避難所の一つです。お話を伺うと、震災前は集落を回る小さなコミュニティバス「もんちゃんバス」を使って生活に必要な日用品や食料の買い物に出ていたそうです。しかし、地震発生から約4週間近くたつ今もバスの運休が続き、身近に家族や親戚がいないMさんは、ご自宅に戻る交通手段を失い、一度も家に戻れていないことを教えてくれました。

「家は立っているからね、壊れてるところもあるけど、一人だからね、一部屋寝るくらいの場所だけでも使えれば、また住もうかなと思って水が出るようになって、またバスも運行されるようになったら、一人でも生活できるからね、そしたら家に帰ろうと思ってるんだ。息子もね、穴水(輪島市に隣接する穴水町)で被災して、そちらが落ち着いたら、こちらにも片付けに来てくれると思うんだけどね」

そう話すMさん、Mさんが心配なのは、家の扉が地震で外れ、開けっぱなしになっていることでした。開け放れたままでは雨風や雪が家の中に入り、家の中が傷んでしまうことを心配されていました。

話を聞いた翌日、Mさんを車に乗せて一緒にご自宅に向かうことにしました。そして、ハビタットのスタッフが扉の開口部分にブルーシートを張り、応急対応が完了しました。

自宅の中にお邪魔すると、家の中は地震が起きた時間のまま時が止まり、さまざまなものが倒れ、一部の壁は崩れかけているなど、自宅に戻ると話していたMさんがお一人で片付けを進めるのには多大な時間がかかることが伺えた。また、ご本人も、余震が続く上に寒さが厳しく、片付けに取り組む気持ちにはまだ向かっていないことが伺えました。

この日は、扉のブルーシート張りとあわせ、もうしばらく続く避難生活で必要なものをまとめることにしました。暖かいコートを羽織り、履き替えが楽な靴を用意し、ハンガーや、まだ食べられそうなみかんを整理していると、Mさんが「脳トレでね、やってるのよ」と紙で編んでいくバッグや毛糸の編み物などを見せてくれました。 

同行したスタッフが「避難所でやれるようにもっていったら?」と提案すると、Mさんは「そうね、じゃあアレがいいかな、ベットの近くにあると思うんだけど」と、探し始めると、ベット下に落ちていたものを「あったあった」と見せてくれました。それは、いくつものビー玉を小さなカップに入れていく遊び道具でした。避難生活の中で身体を動かすことも、頭を動かすことも少ない中、とても重宝しそうな脳トレグッズでした。

「どうなっとるかずっと心配やったけど、屋根が大丈夫やったから安心した。一部屋でも生活できるところを作れたらね。おうちを見に行ける、(物を)とってこれるって思ってなかったから本当によかった、嬉しい、ありがとう」と、帰り道、車で山を下りながら門前町の絶景を眺めおばあちゃんの住む集落のこと、家族のこと、これまで幾度もあった災害のことを話してくれました。

被災された方の心が片付けに向く際に、必要な方に手を差し出せるよう、Mさんをはじめ、被災された方に寄り添い支援を続けてまいります。引き続き緊急支援にご協力(こちら)をお願いいたします。