ハビタットの国内居住支援「プロジェクトホームワークス」の二本柱の一つ、入居支援では、東京都の指定を受けた居住支援法人として、物件情報の提供から内見の同行、賃貸契約のサポートをはじめ、転宅に向けた家財の購入や引っ越しをサポートし、必要に応じて入居後の見守りを行っています。その相談は、単身高齢者世帯をはじめ、低所得者世帯やひとり親世帯、障がいをお持ちの世帯など、住まい探しに困難を抱える方から寄せられます。12月に新居が決定し、1月に引っ越しが完了した50代の大島(仮名)さんも、そのお一人です。
まだ50代ながらも「私の体はボロボロなの」と話す大島さんは、見た目では判断できないさまざまな病気を抱えています。大島さんは若い時に患った病気が原因で、今もお一人で外出することができません。地域の福祉サービスを受けながら、日常生活で必要となる外出に対応してきましたが、物件探しとなると内見や契約などで頻繁に外出しなければならなくなります。ご自身でインターネットを使い物件を検索し、不動産店に問合せを重ねていましたが、お一人では内見に出向くことができず、新居探しは非常に難しかったと教えてくださいました。そのような中、居住支援法人の一覧からハビタットを見つけ、連絡をくださったのが、昨年11月のことでした。
初めて大島さんとお話した時、大島さんはとても焦っている様子でした。こちらから転居の理由をお伺いすると、「12月までに退去するよう、大家から言われている」と話します。半年前に、お住まいのアパートを管理する不動産店から、アパートの立て替えにより3カ月以内の退去を通知されたそうです。大島さんのように、毎月きちんと家賃を収め、問題行動なども一切ない中での一方的な貸主からの退去通知は不当にあたります。さらに、アパートの建て替えなどでの住民の立ち退きの場合は、貸主が立ち退き料を支払う必要があります。しかし、そうした対応も一切なかったことから、大島さんはご自身を担当される福祉事務所のケースワーカーと相談し、お住まいのアパートに住み続ける選択をしてきました。
しかし、アパートに住むほかの住人は一人、また一人と転居していき、遂には大島さんだけになったそうです。そうした中、11月に不動産店から12月末までに退去するよう勧告の文書が届いたのでした。本来であれば、そうした勧告は不当にあたりますが、大島さんは「大家からの嫌がらせも受け、毎日恐怖を抱えながら暮らしている。安心して住み続けられる場所に引っ越したい」と話され、転居を決心したそうです。
ハビタットでは、福祉団体と協力しながら、内見、契約、役所、買い出し等の同行を行いました。幸いにも、12月には新居が決定し、1月の中旬に引っ越すことが決まりました。新居も決まり、安心されているかと思いましたが、大島さんは新天地での生活に不安を抱えられていました。
その一つは、大島さんの持病の一つである化学物質過敏症に起因する新居の不安でした。通常、アパートは前の居住者が引っ越した後、新たな居住者のためにハウスクリーニングが行われます。大島さんは、その際に清掃で使われる薬品に対して体が過剰に反応し、めまいや息苦しさなど体の不調を引き起こしてしまうと教えてくださいました。転居後にその症状が現れないよう、転居前に新居に染み付いた薬品をお湯やアルコールで拭き、除去する必要があり、新年早々にハビタットのスタッフがお手伝いする中、新居での清掃を行いました。部屋の換気をし、全ての天井、壁、床をお湯で拭いた後に、さらにアルコールで拭いていきました。そうした清掃を2回行い、やっと住むことができる部屋が整いました。
引っ越しの当日、荷物が運び出され、がらんとした部屋を大島さんが念入りに確認されながら、「この部屋に住んでもう10年だよ。日当たりが良くて、広さも十分あるところは好きだった」と話されました。住み慣れた家を離れることについて、寂しさを感じていらっしゃるかをお伺いすると、「寂しさよりも、安心して住める家を持てることが嬉しい」と話され、新しい家に移られました。
転居後にスタッフが様子を伺うと、転居により安心して住める家ができたものの、新天地での福祉サービスの手続きなどで課題があることを教えてくださいました。大島さんは、一見すると持病がわかりづらく、周囲の人に理解されにくい一面を抱えています。大島さんの健康状態に見合った福祉サービスを受け、安心した生活を送る環境が整うのには、まだ時間を要します。ハビタットでは、引き続き見守り支援として、大島さんの生活環境が早く整うよう、サポートを継続していきます。
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