ハビタット・ジャパンは、初動調査の結果、石川県輪島市門前町地区に活動拠点を置き、緊急支援活動を開始しました。

門前町は石川県能登半島北西部に位置しており、輪島市の総人口約2万3千人のうち約2割にあたる約4600人が暮らしている地域です。そのうち65%を高齢者が占めており、高齢化が進む過疎地域でもあります。元々曹洞宗の本山があった地域であることから、「禅の町」とも呼ばれ、古い家屋が多く立ち並んでいました。その多くが地震の揺れにより半壊もしくは全壊など大きな被害を受け、住民の約半数が避難生活を送っています。金沢や県外などに家族がいる方は、家族の元や、石川県が勧める2次避難場所に避難する方々もいますが、多くの方は慣れない土地や知らない人の元での生活に不安を頂き、地元に残り避難生活を続けると話されます。こうした方々の避難生活を支えるために、行政をはじめ、自衛隊やNPOが「命を守る」取り組みとして、医療の提供や、食料や生活物資の配布、炊き出しなどに取り組んでいます。

今回の地震の被害を受けた奥能登地域においては、道路状況が甚大な被害を受けている上に、被災地では水の復旧の目途がたたない時間が続いています。また、多くの建物が全壊や一部損壊などの被害を受けていることから、多くのNPO団体と同じく、ハビタットでも活動拠点の確保に困難が伴いました。しかしながら、被災地に赴く中で、門前町で倒壊を免れたお寺の一つ「興禅寺」さんへの物資配送を任されたご縁により、支援ニーズの高い門前町でお寺の一室をお借りすることができることになりました。住職の市堀さんご自身も被災され、お寺に隣接したご自宅で在宅避難を続けられています。震災後の厳しい在宅避難が続いていますが、住職は「自分たちも被災しているけれど、被災されている方のために使っていただけるなら』と温かいお言葉をいただき、お部屋をお借りすることができました。今後は門前町で被災された方々の声に耳を傾け、必要な支援を届ける体制を整えることができました。

初動調査から5日、本格的な支援の実施に向けて再び門前町に向かうと、門前町までの道路状況は大きく改善されていました。至る所に割れ目があった道路も数日の間に随分と舗装が進んでいました。また避難所の運営も整い落ち着きが見られるなど、5日間という短い期間の中で被災地では大きな変化があることを改めて実感しました。

本格的な支援の開始と共にハビタットが活動目標に挙げた一つが、避難所に暮らす方々が体を休めることができるよう、避難所内の環境改善を行うことです。初動調査の際に、避難された方々の中には、フローリングの床に段ボールを敷き、その上に毛布を掛けて寝床としている方の姿が見受けられました。『真冬の厳しい寒さの中、日々体を休めて就寝することができているのか』、そんな心配を抱きました。避難所に残る多くの方々は二次避難などはせず避難所に残ると話されます。自宅に戻ることができない方々にとっては、避難所は一時的でも仮設住宅ができるまでの日々を過ごす住まいに代わる場所です。避難生活が長期化する中でも、避難された方々の体、そして心が少しでも休められるよう、避難所内の寝床の改善を目指しました。そこで、まずは2日間かけて門前町にある全6地区のうち5地区の拠点避難所を中心に、計20近くの避難所を訪問して回り、支援ニーズを調査しました(一地区は山間部のため、調査実施時の天候によりアクセスができませんでした)。調査の結果、地域によっては、発災後にマットが届けられているところもありましたが、最終的には150名分を超えるマットの配布希望が寄せられることになりました。幸いにも、マットは七尾市に拠点を置く「被災地NGO協働センター」との連携によりご提供いただけることになりました。そこで、200枚のウレタンマットの提供を依頼しました。今後は、希望を寄せてくださった方への配布に加え、まだ訪問できていない地域の方々や在宅避難されている方々への配布なども模索し、200人の方への提供を実現してまいります。

その他、ハビタットでは、理学療法士の資格を持つボランティアスタッフが避難所内で健康体操を実施しています。掃除や洗濯、炊事といった日常動作が避難生活の中では減少しがちです。特に、被災地では多くのお店が再開していない上に、北陸の厳しい寒さが加わり、避難所に一日中留まっている方の姿が見られました。そこで、門前会館で健康体操を実施したところ、多くの方から大変好評をいただき、90歳を過ぎたご高齢の方からは「地震がある前は毎日体操していたのよ。すごく嬉しいわ」というお言葉をいただくなど、軽い運動がリフレッシュの一時となっている様子が伺えました。

ハビタットは、今後も引き続き避難所内での健康体操を続けながら被災された方の声に耳を傾け、必要とされる物資の提供をはじめ、被災された方が抱える住まいの問題に寄り添い、被災家屋の片付けをはじめ、ご高齢の方に届きにくい被災者の支援制度といった情報を提供してまいります。緊急支援へのご支援はこちらよりご協力をお願いいたします。