ハビタットの国内居住支援「プロジェクト・ホーム・ワークス」の活動では、ご参加くださるボランティアの方々から「普段の生活では得られない気づきがあった」といったお声を頂くこともあります。今回は、ハビタットのインターン生である川﨑健生さんが、初めてプロジェクト・ホーム・ワークスにボランティアとして参加した感想を寄稿してくれました。


私は10月から3カ月間、ハビタットでインターンをしています。今年5月にアメリカの高校を卒業し、大学入学までの期間に、NGO (非政府組織)の仕組みや組織について学びたいという思いから、ハビタットでのインターンを希望しました。

インターン2日目、ハビタットの国内支援活動の一つである清掃・片付け支援にボランティアとして参加することになりました。訪問するホームパートナーさんについて、ハビタットの担当スタッフから事前に説明を受けました。ホームパートナーの箱沢さん(仮名)は50代後半で、80代の母親と暮らしていること。母親は高齢のため足腰が悪く、さらには認知症の症状があること。箱沢さんご自身は脳に障がいをお持ちであること。モノの仕分けに困難を感じられ、ご自宅が住みにくい状況になっていること。そのため、日常生活で使わないモノを処分し、居住環境を整えることを希望され、地域の福祉団体を通してハビタットに相談が寄せられたことを教えてもらいました。

箱沢さんのお宅には、ハビタットのスタッフ3人と福祉団体の職員の方とで訪問しました。私は、初めての活動に緊張していましたが、ご自宅に到着すると箱沢さんは笑顔で「ウェルカム!(ようこそ)」と私たちを迎え、ご自宅に招き入れてくださいました。

家に入ると、箱沢さんは、「どこから手をつけたら良いのかわからない」とおっしゃりました。福祉団体の方とも相談しながら、今回の活動では、キッチンに置かれている食器棚の前のスペースと、棚の中のモノの整理をすることになりました。見ると、消費期限が切れた食料や調味料、割れた食器や使っていない調理器具が床に置かれ、食器棚の前をふさいでいました。また、机の上には古いチラシや書類、雑誌などが置かれ、ここ数年間は机として使えない状態であることを教えていただきました。私は箱沢さんのお話を伺い、障がいを抱えながらも高齢の母親の介護をされ、さらには居住環境を整えようとされていることに感銘を受け、少しでも箱沢さんの力になりたいと思いました。

いよいよ片付けに取りかかります。古いお酒の瓶や割れた皿、賞味期限切れの食料、ビニール袋など、一つずつ箱沢さんに確認して頂きながら、取っておくモノと処分するモノに分けていきます。作業を始めてみると、モノが大まかに分類されているなど、箱沢さんが、自分のできるところから日々片付けに取り組まれてきたことがわかりました。モノを処分し、少しずつスペースが生まれてくると、箱沢さんはとても嬉しそうな様子で、それまで以上に積極的に片付けに取り組まれるようになりました。片付けを始める前は、一人ではどこから始めれば良いのかわからない様子だった箱沢さんですが、自分から処分するモノを袋に詰めてゆく姿を見て、私は感動しました。

2時間弱はあっという間に経ち、この日の活動は終了しました。今回の活動では、45Lのごみ袋が6袋にもなるほど処分するモノが出ました。片付け前に比べると室内のスペースは広くなりましたが、作業を進められなかった箇所もありました。私は、もっと箱沢さんの力になりたいという思いを抱く一方、2時間という限られた時間でできることとのギャップに苛立ちを感じてしまいました。しかし、今回できなかった作業についてはまた日を改めてハビタットで支援していくと教えてもらいました。別れ際、箱沢さんは少しお疲れになった様子でしたが、私たちボランティアを気遣い、笑顔で送り出してくださいました。

私は、今回のボランティア活動で学んだことがあります。普段の生活では、勉強やアルバイト、身近な家族や友人のことなどで忙しい毎日を送り、家族や友人ではない他人の生活のことを真剣に考え、行動する時間を持つことは多くありませんでした。しかし、今回の活動にボランティアとして参加したことで、活動の間は自分自身のことは忘れて、箱沢さんの気持ちに寄り添い、箱沢さんの生活環境がより良くなるようにと行動することができました。他人を思いやり、行動する時間を持てた体験は、現代社会において、とても貴重な経験だと感じます。また、手伝いを必要とする人たちの元にボランティアとして駆けつけることで、自分自身も周囲のたくさんの人たちに支えられて生活していることに気がつくことができました。活動を通じて気づくことができた人と人との助け合いは、より良い社会を築く上で欠かせない、支え合う地域社会の土台になっていくと思いました。

次回の箱沢さんのお宅での片付け支援は、来年を予定していますが、私は12月でハビタットのインターンを終了し、東京を離れる予定です。箱沢さんがその後の毎日をどのように送っているのかはとても気がかりですが、次のボランティアの方にバトンを渡し、私は、今回の活動で得た気づきを今後の糧にしたいと思います。他人の私を自宅に招き入れ、初対面の私にご自身が抱える悩みや困難さを共有くださった箱沢さんに、またハビタットでのインターンの機会を頂いたことに、心から感謝しています。