ハビタットで取り組む清掃支援には、ご高齢の方や障がいをお持ちの方からご相談が多く、中でも高齢者の相談が半数を超える一方、心身に障がいをお持ちの方の相談も全体の3割を占めています。精神疾患をお持ちの方のご年齢は65歳以下の方が多く、人生の様々なタイミングで鬱病をはじめとした疾患を発症し、片付けへの意欲を失い、極端に部屋の状況が荒れてしまうこともしばしばです。ハビタットの清掃支援は、そうしたホームパートナーさんが、来てくださるボランティアさんとの交流を通して、地域社会との繋がりを取り戻す機会でもあります。

今年初めに相談が寄せられ、7月に支援が完了した野木さん(仮名・30代)もそのお一人です。お部屋の状態を確認するために、初めてハビタットのスタッフがお宅に訪問した時、玄関から部屋に繋がる廊下にはモノがあふれて、床が見えない状態でした。棚やソファなどの家具の上には、服やカバンが山積みになり、1人では、どこから片付けを始めればいいのかわからない様子でした。「こんな部屋の状態を見ず知らずのボランティアさんに見られるのは恥ずかしい」と、ボランティアの方が自宅を訪問しての片付け活動に不安を抱えていましたが、居住環境を変えたい思いから、ハビタットの支援を受け入れることを決断されました。

清掃支援の当日、ボランティアの方3名とスタッフで野木さんのお宅を訪問し、まずは玄関から部屋に繋がる廊下の動線を確保することから始めました。部屋の中は割り箸、ティッシュ、キッチン袋などの日用品や、バッグ、服が散乱していたため、それぞれを袋や箱に仕分けていきます。ボランティアの方がご自宅に入ることを心配されていた野木さんでしたが、当日は積極的に交流され、丁寧に一人ひとりを気遣っていらっしゃいました。野木さんのご配慮でポップな音楽を流しながら作業を進めていくと、「運動が好きで、昔、マラソン大会に参加したこともあるんですよ」と、ボランティアの方との会話も弾み、明るく和やかな雰囲気で1回目の活動を終えることができました。

その後、ボランティアにご協力いただき、合計5回の清掃支援を実施しました。野木さんご自身も、活動の回数を重ねるたびに、部屋の環境が変わっていくことを目の当たりにして、片付けに対するやる気を取り戻していきました。活動の際にはボランティアの方々と共に野木さんご自身も手を動かしながら処分するモノをまとめて、パンパンになった袋をゴミ集積場に運んでくださいました。そして一回一回の活動が終わるたびに「本当にありがとうございました」と何度も感謝の言葉をボランティアの方々に伝え、見送っていらっしゃいました。

清掃支援の最終日、野木さんは「ボランティアさんが、毎回、一生懸命片付けを手伝ってくださって、本当にうれしかったです。家が少し片付いたことで、自分がこれからやりたいことを考えられるようになりました」と話し、「実は、行ったことがない場所に行って、現地で出会う人と交流することが好きなんです」と教えてくれました。私たちが大変驚いたのは、野木さんが翌月から住み込みの短期アルバイトに挑戦し、地方に行くことを決めたことです。清掃支援が居室内の環境改善にとどまらず、ボランティアとの交流を通じて野木さんの新たな一歩を後押しする活動にもなったことをうれしく思います。ハビタットはこれからも、ボランティアの皆さんの力をお借りしながら、ホームパートナーさんの自立に向けた清掃・片付け支援を継続してまいります。