ハビタット・ジャパンは、2022年8月より事業所向け通販サービスを展開するアスクル株式会社と消臭芳香剤等の生活日用品を製造・販売するエステー株式会社と協働し、カンボジアで水と衛生支援の取り組みを進めています。本支援は、アスクルが販売するエステー株式会社のオリジナル商品(トイレの消臭剤 置き型・トイレの消臭スプレー 濃縮タイプ)の売り上げの一部を空気や水の環境改善に取り組む団体に寄付する「空気や水の環境を考えるプロジェクト」を通じて実現しています(詳細はこちら)。昨年8月に本プロジェクトの支援先にハビタットが選ばれて以来、同プロジェクトによるご寄付のもと、ハビタットはカンボジアのシェムリアップ州にある総勢299名の子どもが通う小学校2校でトイレと手洗い場を設置しました。子ども達が安心して学校に通えるようにプロジェクトを継続していくためには、一人でも多くの方にカンボジアの水と衛生問題を知っていただき、プロジェクトへの寄付となる商品を購買頂くことが欠かせません。そこで、この春にカンボジアに渡航し、現地での住宅建築に参加した学生ボランティアを交えて、同プロジェクトを担うアスクル株式会社、エステーの業務用商品の販売を行うエステーPRO株式会社の皆さまとカンボジアの水と衛生問題について座談会の機会を持ちました。

【プロフィール】

小林 祥子さん(アスクル株式会社 コーポレート本部サステナビリティ担当)
上牧 尚子さん(アスクル株式会社 マーチャンダイジング本部商品担当)
佐々木 正人さん(エステーPRO株式会社 EC営業部部長)
宮脇 愛佳さん(エステーPRO株式会社 EC営業部主任)
辻 圭一郎さん (明治大学ハビタット・ジャパンキャンパスチャプター所属)
ハビタット・フォー・ヒューマニティ・ジャパン 新田(シニアプログラムマネジャー)

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アスクル×エステー協働の『空気や水の環境を考えるプロジェクト』が発足した経緯は?

佐々木:弊社としては、何か社会貢献を実施していきたいと考えておりました。ちょうどSDGs(持続可能な開発目標)やサステナビリティ、ESD(持続可能な開発のための教育)というワードが世の中に広まりつつある頃でした。そこで、弊社でお取引があり、B2B通販業界の最大手であるアスクル様と共同することでより多くのお客さまに取り組みにご参加いただくことができ、大きなソーシャルインパクトを残せると思い、共同支援についてお声がけさせて頂きました。

それからは、アスクルの皆さまが真摯に向き合ってくださり、双方の会社の重視ポイントや理念をすり合わせながら、エステーのコーポレートスローガンである「空気をかえよう」やアスクル様の地球温暖化への取り組みから、空気と環境改善をテーマに『空気や水の環境を考えるプロジェクト』が立ち上げりました。

ハビタットを支援先とした経緯についておしえてください。

小林:テーマと仕組みを構築しましたが、支援先を選定する上で知見が少なく、いくつかの支援団体に相談しました。その中で、エステー社員の一人がここにいる辻さんと同じように、学生の頃にハビタットの学生団体(キャンパスチャプター)に所属していたことからハビタット・フォー・ヒューマニティを知ることになりました。その方からはハビタットが「住まい」にフォーカスした支援団体であると伺い、とてもユニークだと思いました。私たちのプロジェクトで対象となる商品は生活の一部としてお使い頂くものなので、商品との親和性も高いことから、なぜこの支援先なのかということもお客さまに伝わりやすいのではないかと思いました

ハビタットさんからはいくつかの国で取り組まれる水と衛生支援についてご提案いただきましたが、カンボジアで学校に通う子ども達が置かれている水と衛生環境について大変大きな衝撃を受けました。安心して利用できる水やトイレを持つことが私たちの社会では当たり前であるからこそ、プロジェクトを通じて、水やトイレにアクセスできない世界がある現実に目を向けてもらいたいと思いました。

 

「蛇口をひねったら水が出る」、世界から見たら当たり前ではないこと

新田:「蛇口をひねったら水が出る」、日本の当たり前が世界からみたら当たり前ではないことなんです。未だ世界には、20億人もの人々が安全な飲み水へのアクセスを欠いています。

カンボジアでハビタットが活動を開始したのは2003年になります。以来、貧困世帯に対する住宅の建築支援をはじめ、きちんとした住まいに欠かせない水と衛生の問題に、地域レベルでもコミュニティ支援の一環として取り組みを進めています。特に、SDGsの目標6で掲げられた「安全な水とトイレへのアクセス」の確保は、カンボジアにおいては目標到達に課題を抱えています。最貧困層の10人に8人がトイレのない生活、つまり、屋外で排泄を強いられる状況にあるほか、郊外では3人に1人が安全な水へのアクセスを欠き、こうした現状は、小学校にも及んでいます。カンボジアの10校に7校は水洗設備が十分に整っていないと言われています。水やトイレの問題は、衛生面の問題にとどまらず、健康面に深刻な影響を与えます。屋外排泄は、感染症を広げるだけでなく、土壌を汚染し、下痢症状を起こさせるなどの健康被害をもたらします。そこで、ハビタットはカンボジアの3つの州で水と衛生支援への取り組みを進めています。その一つ、世界遺産アンコールワットで有名なシェムリアップ州では、小学校を対象に安全な水にアクセスできる手洗い場の設置を支援するほか、既存のトイレを改修し、障がいのある児童も利用できるトイレの改修を目指しています。また、習慣化した屋外排泄の危険性を子どもたちに伝え、トイレの利用を後押しするほか、手洗い習慣を身につけるためのトレーニングを実施するなど、行動変容を促し、石鹸など衛生キットを子どもたちに配布しています。

  • プロジェクトの支援で建てた手洗い場

  • プロジェクトの支援で改修したトイレ

  • 子ども達が手洗いをする様子

女児児童の就学率にも影響する水とトイレ事情

宮脇:安全な水やトイレへのアクセスを欠く人口の大きさにはとても衝撃を受けました。日本にいるとトイレがあるのは当たり前のことですが、その当たり前の生活が世界に目を向けると当たり前ではなく、その大きさに驚かされます。

佐々木:コロナが明けて、観光客が次第に増えてくる中で、日本を訪れた外国の方々は「日本のトイレは世界一だ」と口々に話しますよね。世界一というのは、経済的に豊かな国でも、駅や公園などの公衆トイレにおいてもトイレをきれいに整っている国はそんなに多くはないということなんですね。

上牧:娘を持つ母親ですので、水とトイレ事情が整わないために、安心して子どもを学校に送り出すことができない親御さんの気持ちは分からないわけではないです。水やトイレといった衛生設備が整わないために学校に通えなくなるなんて、とても現実が厳しいと思い知らされます。このプロジェクトを立ち上げなければ、トイレがないから屋外で排泄しなくてはならない環境に置かれた子ども達がいるという現実に目を向ける機会がなかったかもしれません。このプロジェクトを通じて、少しでも自分と同じようにお子さんを抱えるお母さんの気持ちに寄り沿えればと切に願います。

 

カンボジアでの住居建築活動を通して見えた家族の暮らし

辻:僕たちはキャンパスチャプターという、ハビタットの活動をサポートする学生団体に所属し、明治大学に通う学生12名でこの春にカンボジアでの住居建築活動に参加しました。支援先となったのは、5人のお子さんがいるご家族で、お父さんはトゥクトゥクのドライバーをしています。7人家族ですが、稼ぎは一日7ドル、多くても10ドル程度と限られ、その内半分は日々の食費に充てているそうです。日々の暮らしだけでも精いっぱいの中、不運なことに、今年の1月に電気配線のトラブルでご家族の自宅は火事に見舞われ、家の一部が焼失してしまいました。一家が移り住む場所も、家を建て直す経済的な余裕もないため、家族は焼け残った自宅に暮らし続けていたそうです。その家は、雨風を防げる屋根もなく、鍵をかけることもできず、壁もないためプライバシーが守られない状態でした。家族は、近所の方に蚊帳や毛布をわけていただきながら何とか生活を続けてきたそうです。幸いにも、ハビタットの支援を受けることができ、僕たちがボランティアとして一家の家建築に参加することになりました。家族が置かれた状況を目にした僕たちは、一日も早く家族が安心して過ごせる家を取り戻せるよう、一日も早く家を建て直さなければならい、と思いを強く持ち、限られた時間でしたが必死に建築活動にボランティアとして参加しました。

 

「教育を受けさせること」それが親の願い

辻:建築活動の傍ら、支援した地域を回り、家族や地域の人たちの話を聞く機会を持つことができました。そして、どの親も子ども達に「教育を受ける機会」を与えたいと願っていました。確かに、建築活動は平日に行うのですが、平日にもかかわらずたくさんの子ども達がコミュニティで遊んでいる姿を目にしました。また、水と衛生の課題では、僕たちが休憩場所として使っていたコミュニティセンターには手洗い場が設置されてはいたのですが、蛇口から水は出てきませんでした。水を井戸からくみ上げるポンプが壊れ交換を必要としていたそうです。180ドル程度とのことですが、その費用すら地域で負担するのは難しいそうです。

  • 学生ボランティアと家族

  • 修繕を終えたホームオーナーのお宅

  • 水が出てこない手洗い場

誰でも参加できる「空気や水の環境を考えるプロジェクト」

上牧:こうしたお話を伺い、『空気や水の環境を考えるプロジェクト』が扱う商品担当になれたことを改めて誇りに思います。商品担当としては、お客さまが選んでくださるデザイン、そして売上を考えることが優先されますが、この商品は売上だけではない意味を持っていることを改めて知ることができました。寄付が何に使われているか見えにくいこともありますが、この機会を経て、プロジェクトの寄付がどういった方に届くのかをさらに知ることができ、改めて担当になれたことをうれしく思います。


ハビタットは、引き続き同プロジェクトの寄付先団体として、お寄せいただくご寄付をもとにカンボジアの子ども達が安心して学校に通うことができるよう、水と衛生設備の設置を支援して参ります。「空気や水の環境を考えるプロジェクト」の対象商品を購買くださる皆さま、そして同プロジェクトの寄付先としてハビタットをご支援くださるアスクル株式会社そしてエステーPRO株式会社の皆さま、ご支援誠にありがとうございます。