ハビタットの国内居住支援「プロジェクトホームワークス」の取り組みの一つ、入居支援は、単身世帯のご高齢の方や、障がいをお持ちの方、またひとり親世帯の方など、お一人での住まい探しに困難を抱える方をサポートし、安心して、安全に暮らせる住まいにつなげる支援です。先日無事にアパートを見つけることができた田原さん(50代・仮名)もハビタットが支援したお一人です

6月上旬に転居を予定し、今は準備を進めているところです。田原さんはこれまで路上での雑誌販売で生計を立てながら、定住場所を持たずに長くネットカフェなどを利用して生活してきました。しかし最近になりこれまで使っていたネットカフェの利用料が高騰し、月に8万円ほどの利用料を支払うようになっていたと言います。そのため生活費にも影響が出はじめ、アパートへ入居した方が安定した生活が送れるのではないかと考えはじめ、ハビタットにお部屋探しの相談が寄せられました。 

田原さんは、お住まいを探すために、まずは路上販売で関わる生活困窮者支援団体が運営するシェルターに入居しました。そして、引っ越しにかかる家財購入の費用などを貯蓄しながら、ハビタットと一緒に住まい探しを始めました。当初は「部屋探しの勝手が分からないな」と不安を口にされており、希望する住まいの条件を伺うと、「マンションタイプで、できれば高層階でオートロックがあれば」などと、その時に利用していたシェルターをイメージしながら話されているようでした。しかし家賃価格帯の低いマンションタイプの物件は多くない為、おのずと紹介物件は少なくなってしまいます。3件ほど内見し、気になる物件もあったようですが決めきれない様子でした。別の日、改めてもう一度物件探しに不動産店を訪問すると、やはり紹介される物件はわずかです。いくつかの物件図面を眺めながら、「それぞれの良いところが合わさった物件があれば嬉しいけど、なかなかそうはいかないですよね」と悩まれていました。

そこで、ハビタットのスタッフが、アパートタイプの物件も含めて探してみてはどうかと提案してみました。物件探しに慣れていない場合、「アパート」と聞くと昔ながらの古い木造をイメージされる方もいるのですが、実際には築浅できれいな物件もあるので見てみるとイメージが変わることもあります。実際にこれまでより紹介される物件がぐっと増え、田原さんからは「ぜひ見てみたい」という言葉が聞かれ、建物のタイプにこだわらず内見をすることになりました。すると狭小でも築浅でロフト付きの物件や、建物は古くても新しい設備が整いリフォームされた物件などがあり、内見を進めるごとに田原さんの表情は明るくなります。「狭いけどかわいい部屋ですね。きれいでいいな。なんかだんだん楽しくなってきました」などと話しながら前向きにお部屋探しを楽しむ余裕が生まれてきました。最終的には当初の希望条件とは異なりますが、「この物件が頭から離れない」というものが見つかり、アパートタイプの物件へ申し込みを決めることになりました。

その後、貸主による入居審査を無事に通ることができました。賃貸契約の日、田原さんの表情は若干緊張の面持ちでしたが、田原さんのお住まいとなるお部屋を確認すると、洗濯機や冷蔵庫の置き場の大きさを測り、新しい生活を心待ちにしている様子が伺えました。田原さんのお部屋探しを通じて、希望条件に見合う物件が見つからない場合、ご本人に無理のない範囲で希望条件を広げて、いろいろな部屋を見てみることの重要性を改めて感じました。これからもさまざまな方と一緒にお部屋探しをするなかで、必要な提案やアドバイスを出しながら、ご本人が納得できる住まいを見つけられるようお手伝いまいります。