ハビタットの清掃・片付け支援でお会いする方の中には、自分以外の誰かを部屋に招くことや、ご自身の持ち物に触れられることに強い抵抗感を感じられる方がいます。そうした方は、日常生活援助となるヘルパーサービスを利用することが難しく、中には、室内の環境が悪化したまま生活する方がいます。今回ボランティアと訪問した春日(仮名)さんも、そうした特性を持つお一人でした。春日さんを担当する高齢者相談センターの相談員さんによる説得のもと、「1回だけの訪問であればお手伝いをお願いしたい」、そう気持ちを切り替えてくださり、ハビタットの清掃・片付け支援につながりました。

春日さんのお部屋は、床にモノが雑多に広がっていることや、古く壊れたキッチン用品などがいくつも残されてはいましたが、ごみが溢れるような状況ではありません。雑多な空間のなかでも、20年以上暮らしてきたアパートは、春日さんにとっては住み慣れた空間だと教えてくれました。しかしお話を伺うと、床に広がるものたちの中に請求書などが紛れて見つからないことがあるとのことでした。下見のため初めて訪問した日は、電話代の請求書が見つからずに支払えず、電話が止められていました。同行した担当の相談員さんと共に請求書を探してみると、幸いすぐに見つかり、その日のうちに支払いを終えることができました。

清掃・片付け支援の当日は、2名のボランティアが活動に参加してくださいました。春日さんのお宅に伺うと、玄関口に出てきた春日さんの表情は硬く、緊張している様子でした。また、この日は電気が止められてしまい、暗い中での作業となりました。まずは壊れた電子レンジやトースターなどを粗大ごみとして出し、キッチン周りと居室内の床を片付けていきます。床に散らばっていたもののほとんどが書類で、一つずつボランティアと確認しながら片付けを進めます。床に置かれた電話は、気づかないうちに受話器が上がってしまい、春日さんと連絡が取れなくなってしまうことがこれまでに何度もあったと困っていました。そこで、受話器が知らない間に上がってしまうことを防ぐために、電話は台の上に置くことにしました。片付けに同意はしていたものの、初めは警戒されていた春日さんですが、お話ししながら片付けるなかで次第に表情が和らぎ、かつては寿司店の板前として働いてきたことをボランティアにお話ししてくれました。「それで調理器具がこんなにあるのですね」と、和やかな会話が生まれ、板前時代の古い包丁セットも見せてくださるなど、春日さんのかつての暮らしぶりを感じながら片付けを進めて行きました。そして、片付けを終えるころには、春日さんは何度も何度も「ありがとうございました」と気持ちを丁寧に伝えてくださいました。

  • Before

  • After

  • 春日さんとボランティア

春日さんはこれまでいくつも病いを患い、現在もアルツハイマーの治療中であるなど、体調面では不安があります。年相応に足腰も弱くなり、お一人で住環境を整えていくには限界があります。ハビタットの活動を通して、春日さんの生活に他人を受け入れる余裕が生まれ、そのことが必要な介護サービスを自宅で受ける一歩になればと心から願っています。