「このキレイな空間で勉強に取り組んでみたいです」そう話すのは、先日清掃・片付け支援を完了した原口さん(仮名・50)です。原口さんは精神障害があり、モノを溜め込んでしまいます。下見のためお宅を訪問すると、ワンルームの床にはモノが高く積み上げられ、小さな玄関から中に入るのはやっとのことでした。そのため、部屋の全貌が把握できないまま活動初日を迎えることになりました。活動を始めてみると、抱いていた不安は払しょくされました。原口さんはモノを仕分ける判断基準が明確で、大切なモノは本と衣類であることが分かりました。モノの仕分けが順調に進んだことで、初日の活動を終えるころには床の一部が見えてきました。仕分けたモノは収納する場所がなかったため、その日は大きな袋やスーツケースに一時的に保管し活動を終えました。そして迎えた2回目の活動では、ハビタットから本棚やハンガーラックなどの収納家具を提供し、家具を組み立て、一時保管したものなどを片付けていきました。また、活動する中で、当初は見られることすら抵抗を感じていたというお風呂やトイレの清掃にも取り組むことができました。「恥ずかしさでいっぱいでした」と後に思いを口にしてくださった原口さんは、見違えた部屋を見て、申し訳なさと感謝の言葉を終始私たちに伝えてくださいました。

  • 訪問時、足の踏み場もないお部屋

  • 片付けを終えたお部屋

  • 清掃後の洗面所

もう一人、2月に支援を完了したのは軽度な認知症のある木村さん(仮名・80)です。木村さんは、活動前の下見の際や、活動前日の確認連絡の際には、「来てもらっても、あまりやってもらうことがないなあ」と話されていました。こうした返答から、木村さんご自身は片付けを望まれていないかもしれないという不安を持ちましたが、訪問をすると木村さんは快く迎え入れてくださいます。清掃・片付け支援で私たちが最も大切にすることは、ご本人の片付けへの前向きな気持ちです。ハビタットの清掃・片付け支援は、基本的にお片付けをお手伝いできるのは一度きりです。そのため、ご本人の「今ある住まいを良くしたい」という気持ちが欠かせません。幾ばくかの不安を抱えながら木村さんのお宅での片付けを進める中で、「もう少し自分で部屋を片付けなければ、ボランティアさんに申し訳ない」という遠慮の気持ちを木村さんが持たれていたことを知りました。木村さんのお宅の活動では、仕事用として使っていた大きなデスクを処分するために、書類の整理をお手伝いしました。また床に散らばっていたモノを押し入れの収納を生かして整理し、積み重なった分厚い埃などを掃除していきました。片付けを終えた部屋を見回した木村さんは「部屋らしくなった」と大変嬉しそうに何度も拍手をし、喜んでくださいました。

原口さん、そして木村さんのお二人に共通することは、どちらのホームパートナーさんも控えめな方であるということでした。そのため、私たちはどこまで踏み込んでお手伝いすべきか迷うことが多々ありました。「ここは汚いからやらなくていいです」という言葉は、見られることへの抵抗なのか、片付けてもらうことへの遠慮なのかを判断することは、一度や二度お会いしただけでは推し量ることが難しいところです。そうした際に心強いのが、ハビタットとホームパートナーさんをつなぐ地域の保健センターや包括支援センターなどの相談員さんです。お二方が信頼を置く相談員さんが上手にホームパートナーさんの思いを聞き取り、時に片付けに加わるなどし、ホームパートナーさんがハビタットと共に住環境の改善を目指す中で安心できる環境づくりをサポートくださっています。

ハビタットの清掃・片付け支援は、ボランティアの皆さんはもちろん、こうした相談員さんとの協力があってこそ成り立っています。引き続きさまざまな連携団体との協力を広めながら、必要な方へ支援が届けられるよう活動を継続していきます。