10年に一度といわれる大寒波の日、定期的に活動に参加くださるベテランボランティアと共に上田さん(仮名60)のお宅を訪問しました。かつては料理人として務めていた上田さんですが、1年以上前から体調を崩され、部屋の掃除が出来なくなってしまったといいます。病により体が思うように動かなくなり、移動には杖が欠かせないと話す上田さん、少し動くと息切れしてしまうなど、辛そうな様子が見られました。

上田さんの部屋は、壁や床、家具などいたるところに汚れやほこりがこびりつき、一部の電灯は切れたまま交換できずにいました。洋服は床に散乱しています。また、古い布団は中の綿が飛び出して劣化が激しいうえに、掛け布団は薄い毛布1枚しかありません。節約のために、食事は1日に1回という生活をされていたこともあったそうです。そんな時、地域の高齢者相談センターにつながり、食事や医療の面は少しずつ改善されていきました。しかし、居室の環境を改善するには生活を切り詰める上田さんが民間業者に清掃を依頼するほかなく、上田さんの相談員よりハビタットに清掃・片付け支援の相談が寄せられました。

上田さんは年金で生活しているため、日常生活援助のヘルパーサービスなどを利用する場合は全て自費となってしまいます。生活保護を受給していれば、そうしたサービスも安心して受けられるのですが、わずかな差により年金暮らしとなった上田さんは、病院の費用なども自己負担が必要となる場面が多く、結果的には、生活保護世帯よりも生活が困窮している状態にあります。こうした制度の狭間にあり、安心できる住環境が得られない方は特に高齢の世帯に多く、ハビタットにもよく相談が寄せられています。

寒さ厳しい冬が到来する中、上田さんには一刻も早く体を温め、休まることができる布団が必要でした。幸いにも、敷布団と掛け布団は相談員さんが寄付品を見つけ、上田さんに届けられました。ハビタットからは、居住支援の一環として、枕やシーツに併せて、衣類の収納用にハンガーラックなどを提供しました。活動日、新しい布団に新調したシーツをかけていくと、「これだけでもう十分。こんな日に布団がなければ凍え死んでいたよ。これでよく眠れる」と、上田さんはほっとした様子で話してくれました。古い布団は粗大ごみに出すと費用が発生するため、小さく切って燃えるごみに出します。しかし中の綿は思いのほか分厚く小さくするには力が必要で時間もかかります。そのしっかりした作りから、かつては立派な布団だったことが伺えました。すると上田さんは「その布団は親の形見なんだよ。もう30年も前に譲り受けてね」と、作業の様子を見つめながら教えてくれました。「処分しちゃって大丈夫ですか」と尋ねると、「もう十分、ここまで使ったから」と、上田さんは気持ちに一区切りつけるかのように布団から視線を離さず力強く応えてくれました。

半日の作業で部屋はずいぶん見違えりました。 次回はキッチンや床壁、雑貨類などを片付け、上田さんのお宅でのお手伝いは完了となりそうです。寒い冬であっても、一人でも多くの方が安心して暖かく過ごせる居室内の環境を取り戻せるよう、ハビタットでは引き続き布団提供なども併せて実施しながら支援を継続してまいります。