「スペースがなくて敷きっぱなしになっているお布団を、押し入れに片付けられるようにしたいんです」そう話すのは、シングルマザーだった中井さん(仮名)です。息子さんとお二人でエレベーターの無い都内の集合住宅にある5階の部屋で暮らしてきたそうですが、成人した息子さんが一人暮らしをはじめ、今はお一人で暮らしています。

中井さんは、ご自身が抱える障がいの特性から片付けが苦手だったそうです。それに加えて、気持ちに波があるため、落ち込むと居室内の片づけには手が回らず、ごみを袋に詰めることで精一杯となり、気が付くと室内はペットボトルや缶が入ったたくさんのごみ袋と着なくなったまま放置された洋服で埋め尽くされてしまったそうです。中井さんは物腰柔らかでやり取りも丁寧な方なので、一見しただけでは障がいを持つことが周囲には伝わらず、「できない」ということを理解してもらえないことにしんどさを感じてきたと話します。

息子さんの一人暮らしをきっかけに第二の人生を歩み始めた中井さん、気持ちの面でも落ち着きを取り戻したこともあり、居室内を片付けたいという思いを抱いたそうです。そこで、訪問看護の看護師さんを介してハビタットに相談が寄せられました。

活動当日までにもご高齢のご両親に手伝ってもらいながら室内の片付けを進めていたという中井さん、ほとんどの物を処分すると決めていたので片付けはスムーズに進みました。長年敷きっぱなしとなったお布団を押し入れに片付けるためにも、押し入れを中心に処分するものをどんどん袋に詰めていきます。息子さんの小さいころのアルバムが出てくると懐かしそうに見入っている中井さんの姿もありました。

今回の片付けで一番大変だったことは、袋に詰めたごみ袋をごみ置き場まで運ぶ作業です。緊急事態宣言下でボランティアとの活動が叶わない中、この日はスタッフ2名で5階からの階段を何度も往復しながらの作業となりました。合計30袋にもなるごみ袋を出し終わると、室内はすっきりしました。しかし、長年ものに埋もれていたじゅうたんはボロボロになっていたり、処分しきれていない不要なものが他にもたくさんあるため、もう一度片付けに入る予定です。片付けを終えた後は、中井さんが日常生活援助サービスの利用を開始することで、居室内の環境が維持されることを目指しています。

中井さんのように、最近の相談は一度では活動が終わらない継続支援を必要とするお宅が増えるなど、スタッフが総出で支援にあたり、ニーズに応えています。緊急事態宣言が明け、ボランティアとの活動再開を迎える日には、ぜひ皆さんのお力をお貸しくださると嬉しいです。