ハビタット・ジャパンでは、現在首都圏にある複数の福祉施設における修繕支援に取り組んでいます。そのうちの一つ、神奈川県にある某母子生活支援施設では、一室の修繕支援を実施しました。施設のスタッフ小池さんに施設について、また本支援についてお話を伺いました。
『母子生活支援施設』と聞くと、皆さんはどんな施設を想像されるでしょうか。ここに初めて来られる多くのお母さんたちは、「もっと暗くて、閉鎖的な場所だと思っていました。自由な雰囲気で、ここなら安心して生活できますね」とおっしゃられます。子どもと一緒に施設を利用する背景には、配偶者による暴力や、持病を抱えること、また経済的な理由など、何らかの事情によりお一人では子どもの養育が困難な状態にあります。あるいは、お子さんの不登校などの問題からお母さんが影響を受け、施設の利用が必要だと判断される場合もあります。いずれも行政やまた福祉関係各所に相談した上で、当施設を紹介されてやって来られます。
施設では、スタッフがお母さんたちのお話を聞き、自立に向けて段階的な目標を定めながら、さまざまなサポートをしています。目標といっても、例えば入居したばかりの方には、「10時までには事務所に一度顔を見せにきてくださいね」といったように、施設での生活に慣れてもらえるような習慣に繋がるようなものから、子どもにどういったご飯を作ってあげるかといった子育ての相談、通院の同行といった本人の健康回復に向けたサポート、就労や新しい居住地をどうするか、また離婚の手続きをどうするかといった自立に向けた相談まで、それぞれの事情に合わせて、さまざまなスタッフがお母さんとそのお子さんをサポートしています。
Before
After
新たに修繕された居室
スタッフの小池さん
今回ハビタットに修繕をお願いしました部屋に住んでいたご家族は、これまで生活されてきたどのご家族よりも長く、10年近く施設で生活されていました。一生懸命子育てに取り組んでいらっしゃいましたが、お母さんが精神的な病気を長く患っており、子育てはほとんどスタッフが行ったと言ってもいいほどでした。お料理もお掃除も努力されていましたが、こまめに掃除することが難しかったり、また料理も失敗してコンロを焦がしてしまったりと、10年という滞在期間で、部屋のあちこちが痛み、建具の一部が破損していました。通常は、利用世帯のご負担で破損個所を直していただくことになっています。ですが、今回のご家族はご自身で負担することが経済的に難しく、施設としても負担するには金額が大きく、どのように資金を捻出していくべきかを思い悩んでおりました。
そんな時、ハビタットをご紹介いただいたのです。3月末に視察に来ていただいて間もなく、支援を実施していただくことが決まりました。その後も業者さんとの打ち合わせから実際の工事に至るまで、驚くほど迅速に対応していただきました。施設の利用を希望される方から、いつ連絡が入るかもわからない状況でしたので、修繕が早く完了すればするほど、新しいご家族を迎え入れることができます。前述のご家族が5月末に部屋を出ることになり、すぐに修繕を開始いただき、6月にはすべての修繕を完了していただけました。その後すぐに入居希望の方が部屋を見に来られました。きれいにしていただいた部屋を見て、その場で入居を希望され、無事に入居を済まされました。ただただありがたいなと、そう思っております。
本施設での支援はブルームバーグのご支援により実現しました。同社との協働のもと、今後はコロナ禍によりこれまで以上に施設内で時間を過ごすことが多くなった子どもたちのために、施設内に用意されている学童ルームの壁紙補修を実施するほか、8月には施設を利用する親子を対象に、ブルームバーグボランティアによるオンラインでのアートスクールを実施しました。
ハビタットは、さまざまな事情で自立に向けた支援を必要とするお母さんと子どもたちが健全で豊かな未来を築けるよう、修繕支援を通じて安心・安全な住まい、そして自立に向けた基盤となる施設を整え、ボランティアと手を取りあい、子どもたちに未来への懸け橋を築くことを目指しています。