「何も片づけができてなくてすみません」、そう頭を下げながらボランティアを迎えてくれたのは、都内の団地に暮らす母子世帯の山下さん(仮名)です。離婚してから10年、都内の団地に娘さんと二人で暮らしています。

山下さんは女手一つ、働きながらひとり娘を育ててきました。しかし、離婚後の心痛などが重なり、次第に体調を崩し、今は生活保護を受けながら治療を続けています。それでも、週3日は近所のお店でアルバイトをしながら自立に向けて取り組んでいますが、自宅に帰ると寝込んでしまうことも多いそうです。「コロナ禍でもあるし、片づけもしなきゃと思っていても、心も身体もついていかない」そう話す山下さんにとっては、三食を作ることだけでもやっとのことだそうです。そうした状況を物語るように、室内は掃除が行き届いていないのが一目でわかる状態でした。

年が明けてからの緊急事態宣言の発令を見越し、継続的な支援が必要な山下さんのお宅には、ボランティアに加え、スタッフとハビタットの理事のが活動に参加しました。私たちを出迎え、申し訳なさそうにする山下さんに対して、ボランティアが優しく「大丈夫ですよ」と声をかけ、活動がスタートしました。そして、「片づけないといけないと頭ではわかっていても、どこから始めたらいいか分からなかった」と話す山下さんも掃除に加わりました。

活動に参加した理事の田中さんは「山下さんに出会って、病気を抱えながらもお子さんを育て、何とか今の状況を改善していきたいという思いを直接伺い、私も二人の子供の母親として、心を動かされる思いでした。お手伝いすることで住環境が改善し、またきれいになった環境を山下さんが持続させていくためにどうすべきかを考え、私自身が母親としての経験を通じ、自分にもできる支援があるのではないかと、ハビタットの理事として改めて思いました」と語ります。

自ら進んで窓の拭き掃除をする山下さん

初めて訪問してから計3回、緊急事態宣言下ではスタッフと理事の田中さんと共に清掃支援に取り組みました。これまでの活動では、キッチンやお風呂、山下さん親子の寝室の清掃、壊れたふすまの張替えなどを支援しました。そして支援完了となる最終日、「前からやりたかったんです」と照れながら山下さんが自主的に窓掃除をしている姿が見られました。そして何度も「うれしい。うれしいです」ときれいになった部屋を見回していました。「一人では絶対にできなかった」と話す山下さんも、自ら粗大ごみ回収の依頼を清掃局に行うなど、ハビタットの支援をきっかけに、自分にできることを一つづつ見つけ、進められるようになりました。

緊急事態宣言後解除後、ハビタット・ジャパンでは再びボランティア募集を再開する予定です。プロジェクトホームワークスは15歳以上の方であればどなたでもボランティアとしてご参加いただける支援活動です。皆さんの経験を活かすボランティア活動にぜひご参加ください。