(物件を)紹介してくれるだけありがたい。贅沢は言ってられないよ」そう話すのは、7月にアパートへ入居した田中さん(仮名)です。その言葉からは、住みたい物件を探すというよりも、焦る気持ちが現れているようでした。

約一年前、田中さんは地方から東京に出てきました。ただ、住むところも、行く当てもなかったため、向かったのは生活困窮者を支援する窓口だったそうです。最低限のサポートを受けながら、生活を自立させたいという意欲は持っていたものの、要請され受けた健康診断の結果、就労が難しいと診断されてしまいました。そのため、区より紹介を受けた「無料低額宿泊所」での生活が始まったそうです。

約1年、生活保護を受けながら無料低額宿泊所で暮らしていた田中さんですが、不定期で仕事に就くものの、手持ち資金を増やすことができず、生活の立て直しが図れないことで全てが嫌になったそうです。そして、新型コロナウイルスの感染拡大を受け発せられた緊急事態宣言の真っただ中、ほとんどの荷物を宿泊所に置いたまま飛び出しました。いくばくかの手持ち資金を使い、一泊2,500円のビジネスホテルに入り、ただ部屋にこもりインターネットを見ながら時間を過ごしていたと話します。しかし、そこが転機に。インターネットを使い偶然見つけたのが、困窮者を支援する団体だったそうです。そこから、人生を諦めかけていた田中さんの生活が一転しました。

支援団体の方と会った頃には既に手持ち資金も尽きていたそうです。支援団体の方から今後どうしていきたいかを考えるように求められた田中さん、考え出した答えは「いつか正社員として就労したい」という気持ちだったと話します。その思いを受け、支援団体が福祉事務所に掛け合い、コロナ禍東京都が困窮者向けに用意したビジネスホテルに滞在できるようになり、アパートに転宅するチャレンジが始まりました。ハビタットが田中さんに出会ったのはその頃です。支援団体から相談が入り、田中さんのアパートへの転宅を支援することになりました。

しかし、アパート探しは簡単ではありません。不動産会社に連絡をしても、返ってくる言葉の大半は、「生活保護の方への物件紹介は対応していない」または「紹介できる物件がない」と断られてしまいます。ようやく紹介してくれる物件があっても、風呂なしアパートのみということもあります。とある不動産会社では、スタッフが二人がかりで物件情報の束を手に片っ端から管理会社に電話をして調べてくれました。断られた資料が積みあがる様子を目の当たりにした田中さんは、どんな気持ちでそれをみていたのでしょうか…。そしてやっと内見できる物件が見つかって申し込んだとしても、物件オーナーや保証会社の審査に通らない限り契約はできません。生活保護の方の物件探しが難しい背景には、物件を所有するオーナーの経験等による個人的な感情もあるようです。

田中さんが唯一希望していたこと、それはエアコンがついている部屋への入居です。風呂なしも覚悟してくださった田中さんですが、最終的には希望していた地域から少し離れてしまいましたが、真新しいエアコンが備えられた、お風呂のある部屋を見つけ、田中さんの転宅を支援することができました。

アパートへの入居日、スタッフが田中さんの元に伺うと、銀行口座を新しく作りに行ったことを教えてくれました。住まいを失い、銀行口座を失っていた田中さんですが、「家」と呼べる帰れる場所を持ち、銀行口座を開設したことで、自立に向けた大きな一歩を踏み出し始めたようでした。

新型コロナウイルスの感染が再び拡大する傾向にあり、先行きが見えない日々が続いています。こうした中、仕事を失い、住まいをも失う方がいます。安心・安全に暮らせる住まいは、生活の基盤です。困難な状況から抜け出す活力、そして生活の安定、自立を築きます。住まいを失い、どこに助けを求めたらいいか分からない方、どうかまずはハビタットにご相談ください。住まい探しをはじめ、福祉制度の利用については適切な関係機関につなぎ、安心して暮らせる一歩を踏み出せるよう、尽力いたします。

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