「これであんまりうろちょろしなくて済むよ」、そう話すのは先日6年ぶりにアパートへ入居した佐藤さん(仮名)です。

ハビタットには今、連携する支援団体を通じて、住まい探しの相談が寄せられています。相談者の多くが、新型コロナの影響で派遣切りにあい、仕事と住まいを同時に失った方や、「ネットカフェ難民」と言われる、ネットカフェを寝泊まりに使っていた人たちです。

ハビタットが参加する連携ネットワーク「ハウジングファースト東京プロジェクト」では、「まずは住まいを取り戻す」ことをコンセプトにホームレス状態の人たちを対象に支援を行っています。コロナ禍でも、緊急支援策として政府が打ち出した一律10万円給付は、対象を「4月27日時点で住民基本台帳に記録されている者」としています。日本の公的サービス、福祉サービスは住民票に基づいて各自治体がサービスを提供する仕組みになっている上に、自立するための就労にも住所は必要であり、生活を安定させていくには、住まいは欠かせません。

住まい探しを国内居住支援の一つの柱として活動する中、連携団体を通じてコロナ禍に出会った一人が前述の佐藤さんです。佐藤さんは40代で東京に上京し、アパート暮らしを経た後、新しい職場の社員寮に入りました。しかし、職場と折が合わずに社員寮を出ることに。そこから6年近く、ネットカフェと生活困窮者のための住居施設「無料低額宿泊所」での生活を半年ごとに繰り返してきたそうです。「無料低額宿泊所」での暮らしは、寝る場所と三食が賄われた日々だと話す佐藤さんですが、そこでの暮らしはプライバシーがない、自由がない窮屈な生活だと言います。しかし、福祉事務所に相談すると「無料低額宿泊所」に入れられてしまい、不安定な生活を続けてきたそうです。

緊急事態宣言が出された時はネットカフェに滞在していたという佐藤さん。営業休止となった後、いくばくかの手持ち資金で安価なビジネスホテルに身を寄せたそうです。しかし、資金が底をつき、食べるものも泊るところもなくなった頃、佐藤さんはネットで見つけた情報から、支援団体の一つでハビタットが連携する「つくろい東京ファンド」に連絡を取ったことが転機となりました。支援者と共に福祉事務所を訪れ、なんとか都が用意したビジネスホテルに入ることができたそうです。そこからハビタットと共に住まい探しがはじまり、「無料低額宿泊所」ではなく「アパート」に入居する足掛かりを作ることができました。

佐藤さんは、幸運にも最終的には本人が希望していた土地で、納得いただける物件を見つけることができました。入居前には、冷蔵庫や布団など、生活道具一式をリサイクルショップで購入する佐藤さんにハビタットが同行しました。そして、入居日、ビジネスホテルを出た佐藤さんと共に、福祉事務所を訪れ、不動産会社との契約に立ち会い、その足で新居となるアパートに向かいました。

「(アパート暮らしは)その日に移動しなきゃいけないとか、時間に迫られている感がないし。(ネットカフェは)寝坊しちゃうと追加料金が取られるから、その日の昼めし代がなくなる心配がつきもので、落ち着かないよ」と、安心して過ごせる場所を確保した喜びを話してくれました。

今回のコロナ禍では、働きたくても仕事がないという若い世代や女性が、生活困窮に陥る姿が目立ちました。また自分には貧困など関係ないと思っていた人たちも、大きな打撃を受けています。緊急事態宣言が明け、街に活気が戻りつつある一方、変わらず生活困窮し不安を抱える人たちもいるのです。安心して暮らせる住まいが必要だけれども、どこに助けを求めたらいいか分からない方、どうかまずはハビタットにご相談ください。住まい探しをはじめ、福祉制度の利用については適切な関係機関につなぎ、安心して暮らせる一歩を踏み出せるよう、尽力いたします。