3月を迎えると、東日本大震災の記憶が今も鮮明に思い出されます。ハビタット事務局では、震災翌月にボランティアを全国から募り、被災家屋のがれき撤去や泥だしなどの活動を開始しました。そして、長期的な支援を見据え、宮城県と岩手県に事務所を構え、震災から4年近く現地で住まいを失った方の住宅再建を中心に復興支援に取り組んできました。その間、企業サポーターやキャンパスチャプターの学生をはじめ、東北の力になりたいという思いを抱えた多くのボランティアに出会うことができました。その中の一人が東北大学に在学していた大学生です。福島県出身であったこと、そして被災地で学業に取り組む一学生として、復興に向けた取り組みを模索する中で、ご友人の紹介を通じてハビタットを知り、復興支援ボランティアに参加くださいました。この参加をきっかけに、2013年、東北で初となるハビタットの学生支部キャンパスチャプター「As One」が東北大学を拠点に誕生しました。東北地方唯一のキャンパスチャプターとして、ハビタットが世界各国で取り組む住居建築にボランティアとして参加するほか、キャンパスのある宮城県を中心に様々な復興支援活動にボランティアとして参加するほか、被災地を訪れ、震災について学んでいます。そんなAs Oneの皆さんに、被災地の様子をはじめ、キャンパスチャプターとしての復興への関わり方、抱負を伺いました。
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◆As Oneから見える被災地の今、そして課題を教えてください
今の被災地は、がれきや避難所といったものはほとんどありませんが、復興の様子は場所や状況によって様々です。宮城県の女川や石巻、南三陸などでは、駅や役場といった住民の生活の重要な場所を中心に、インフラが整い、商業施設や観光客向け施設が立ち並び、賑わいをみせています。一方で津波の被害があった沿岸部では、居住禁止となったり、防波堤や嵩上げ工事のために、工事中のままであったり更地の状態である場所も多くあります。
また、福島県でも原発に近い場所ではさらに状況が異なります。除染作業で出た土砂や廃棄物が含まれるフレコンバックが田んぼの一角に仮置きされているところが未だに多くあり、除染作業は今も続いています。また、未だに帰宅困難区域があり、避難指示が解除されても戻ってくる住人が非常に少ない地域があるなど、原発問題による復興の差は非常に大きいです。
残された課題についても状況によって様々ですが、共通して言えるのは、震災の経験、教訓が風化していくのではないか、という懸念です。年々人々の関心が薄れていくなかで、今も語り部を続けている方たちは、この教訓をまた災害が起きた時に役立てられるよう、活動を続けていらっしゃいます。
また、比較的復興の進んでいる地域ではこれからのまちづくりが課題となっています。被災地では避難による人口流出や少子高齢化がより顕著に進んでいます。さらに仮設住宅や公営住宅に移り住んだ関係で、近隣住民間のコミュニティも以前とは違う形となっています。生活の基盤が回復したからこそ、活気あるまちとしてこれからの発展が意識されています。
◆キャンパスチャプターとして継続する活動や復興への取り組みはどんなものがありますか
As Oneとして行っているボランティアはいくつかあります。まず、宮城県石巻市南浜の「こころの森」プロジェクトです。南浜は津波の被害が大きく、現在居住禁止区域となっています。そこに復興祈念公園を国や自治体と協力して造園しているのがNPO法人こころの森です。As Oneからメンバーを募り、月一回程度訪れ、植樹、苗木や花の手入れといった作業や、イベント運営のお手伝いを行っています。ほかにも間伐材を活用したワークショップの参加や地域住民との交流を通じ、コミュニティづくりにも関わっています。
他にも石巻市では復興公営住宅での活動があります。復興公営住宅では、住民の方々の集いの場として、自治体主催で夏祭りやクリスマス会を行っています。私たちもそこに参加させていただき、イベントを企画したり、住民の方と交流を持ったりしています。そのほか、南三陸では、南三陸を盛り上げようと活動していらっしゃる団体の活動に参加し、牧場にて餌づくりや遊具の手入れ、清掃といったお手伝いを行いました。
◆3.11に行っている活動はどんな活動ですか
3月11日には、被災地各地で追悼式典が行われており、昨年は南浜での式典に参加しました。そこではメッセージを込めた風船を空にあげ、夜には参加者で作った灯籠によるライトアップが行われました。
◆ボランティア活動やスタディツアーではどんな学びや発見がありましたか
「個人的に印象に残っている場所は宮城県石巻市にある旧大川小学校と福島県浜通り側の町の風景です。旧大川小学校については2011年3月11日に津波の被害を受け、被災したまま時間が止まっているような外観に衝撃を受けました。浜通りについては津波による被害は宮城県と比較すると少なかったものの、原発事故の被害があったため、町並みは原発事故発生当時のまま、周りに雑草が生え放題だった建物もたくさんあって、こちらにも大変驚きました。スタディツアーの感想は、色々な場所によって被害の状況や復興の状況が異なっていることを実際に見ることができてよかったと思いました。また、東北で唯一のCCということで、東日本大震災に一番向き合うことのできるCCだと思っています。だからこそ自分の目でたくさん見て、たくさん学ぶ必要があり、そのことを発信していく必要があると思います。そのことについても頑張っていきたいと思います」(3年 飯田さん)
「南三陸では瓦礫はなく、撤去された様子でしたが、かさ上げ作業や海岸の整備、道路の拡張等々復興作業は未だになされているのが見て分かりました。震災から9年という月日と復旧作業との差異を大きく感じました。語り部さん曰く、今の楽しみはこれから行っていく自分たちの新しい町づくりだそう。もう昔の風景は蘇らないが、自分たちで新しい町をゼロから作り直せることに期待とやりがいを感じているそう。私もその一端に関わっていきたいと思いました。」(3年 茅野さん)
「地元のNPOによる活動に参加する中で、代表の方があそこに○○を作ろうと思う、ここで○○をやってみよう、とこれからのことを楽しそうに語ってくださいます。そのように、復興に明るく楽しんで取り組む姿が非常に印象に残っています。取り組んでいる公園が10年、20年後も復興のメッセージを残すとともに、訪れた人々が楽しめる公園になることが非常に楽しみです。そのためにもこれからもお手伝いを続けていきます。」(3年 遠藤さん)
◆被災地に根付くキャンパスチャプターとしての今後の抱負をを教えてください
震災から約10年という節目にある今の被災地を実際に訪れ、ボランティアを通じ現状を学ぶことの貴重さを実感しています。だからこそ活動を通して学んだことをより多くの人に広めることをAs Oneとして力を入れていきたいと考えています。そのためにも継続している活動を絶やすことなく続け、復興の長い道のりの一部に加わり続けていきます。
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ハビタットのキャンパスチャプターであるAs Oneは、As Oneに所属する学生メンバーをはじめ、全国に広がるキャンパスチャプターのメンバーに被災地の今、そして復興への取り組みを伝える役割を担ってくれています。ハビタットでは、引き続き様々な研修などを通じて、As Oneをはじめ、キャンパスチャプターによる各地域での取り組みをサポートして参ります。