「20年ぶりに床を見ました…」そう話すのは、ハビタット・ジャパン国内居住支援「プロジェクトホームワークス」で支援しているホームパートナーの大野さん(仮名)。言葉の通り、足の踏み場もないマンションの一室で暮らす大野さんは、寝室にたどり着くまでに、毎日いくつものモノの山を越えて行かねばなりませんでした。洋服や小物、本などを大切に取っておくうちに捨てられなくなり、月日と共にいつしかモノに囲まれた生活になったそうです。

ボランティア活動が進むにつれて、ボランティアとのコミュニケーションを楽しんでいる様子の大野さん。ゆっくりとご自身のことを話し始めてくれました。「きっかけは、離婚した主人に対しての嫌がらせのつもりでした。モノが散乱していたら、もう家に寄りつかないだろうと思って…いつの間にか何十年も経ち、こんな状態になってしまいました。」

定期的に大野さんを訪問している福祉担当者さんさえ聞いたことがない話でした。そして、大野さんは続けて掃除を決意した思いも話してくれました。「孫が3人いるんですが、一番下の子がまだ幼稚園に行っているんです。けど、私に会うと怖いって泣くんです。」そう言って、病気でやせ細った体をさすりながら、こんな見た目な上に、こんな生活をしていたら無理もないという大野さん。少しでも孫に喜んでもらえるようなおばあちゃんになりたいと話してくれました。

この度の活動には、米国のメットライフ財団よりご支援をいただき、メットライフ生命保険株式会社のボランティアの皆さんにご協力いただきました。当日の活動では、モノの山を登らなくてもベッドにたどり着けるよう、まずは寝室の片付けに取り掛かりました。「大野さん、これは取っておきますか、それとも捨てましょうか」とたずねるボランティアさん。最初は全て必要だと答えていた大野さんも、少しずつ片付いていく寝室を見て、「これは捨ててしまおうかな」と手放すことを決めていきます。また一休みしてくださいと、途中お茶を入れてくださった大野さん。片付けだけではない、ボランティアとの交流を通じて、大野さんの寝室が少しずつ片付いていきました。また、ボランティアが来ると聞いて、遠くに暮らす娘さんもお孫さんを連れて手伝いに来てくれていました。部屋が片付いていく様子を見たお孫さんは「キレイになってうれしいね!」と大野さんに声をかけると、嬉しそうに返事をされていました。大野さんのお宅が安心・安全に暮らせる環境になるには、片付け支援の継続が必要ですが、ボランティアによる協力、そしてお孫さんの言葉に後押しされて、一歩を踏み出し始められたように感じる活動となりました。

  • メットライフ生命のボランティアの皆さん

  • 大野さんが淹れてくださったお茶で休憩

  • 何を取っておくべきか優しく尋ねるボランティア

  • ベッドの上のモノも片付け、新しいカバーも付け直した

ハビタット・ジャパンは企業や団体からのご支援を受け、これからも一人でも多くの方の再スタートの一歩を、住環境の改善を通じて取り組んでまいります。