ハビタット・ジャパンはこの春、日本からは初めてとなる建築ボランティアチームを南アフリカへ派遣しました。チームが向かった先は、東海岸沿いに位置する南アフリカ第三の都市ダーバンです。ハビタット南アフリカは10年前からダーバン郊外にあるウムガババと呼ばれる地域で、政府とウムガババのコミュニティリーダーと共にハビタットのミッションである「健全で安心して暮らせる家」の実現を目指し住居建築をはじめコミュニティ支援に取り組んでいます。
24時間にも及ぶ長旅に耐え、日本のボランティアチームが降り立ったダーバンは予想以上に都市化が進んでいました。一年を通して気温が高く常夏のような気候と、いたるところに椰子の木が生えている街並みはカリフォルニアのようでした。しかし、市内に出るとアパルトヘイトの負の歴史を物語る街並みも見受けられます。町の中心部またその周辺にはヨーロッパ風の大きく綺麗な家やアパートが立ち並び、その地域は家賃も高いため、今でも住んでいるのは白人の方が多いそうです。またフィニックスと呼ばれるインド人街も存在します。ダーバンは(インドに次いで)世界で一番大きなインド人街があります。アパルトヘイト時代、インド系南アフリカ人はフィニックス内で生活を営んでいて、外に出ることは許されなかったそうです。そして中心部から少しはなれたところに多くのタウンシップと呼ばれる地域があります。タウンシップはスラムのような住宅街で、国有地または私有地に簡易的な家を建てて暮らしている人々がほとんどです。タウンシップには、郊外から市街地に仕事を求めてやってきた人々が住み着くこともあるそうです。
ダーバンの街並み
タウンシップ
タウンシップで暮らす子ども達
南アフリカの失業率は40%に上り、学歴があっても仕事を見つけることは若者にとって難しいのが現状です。日本の学生チームが住居建築をお手伝いしたトゥリさん(30歳)は高等教育まで受けています。家族の生活を支えるため、昨年の春まで季節労働に就いていましたが、今は仕事がなく、新しい職を探すトゥリさんは「仕事は選ばないし、肉体労働でも構わないわ」と話していました。もし新しい仕事がダーバン以外の場所にあれば、息子(12歳)を家に残して出稼ぎに行くのもいとまないと真剣な語り口で話してくれました。トゥリさんが住む家は木材を並べた壁に、絨毯布を中から張り合わせて雨風をしのいでいましたが、雨季になると家に雨水が入り込んでいたそうです。その家は10年前にいとこ達に手伝ってもらい自分たちで建てたそうです。
トゥリさん一家のようにウムガババに住む家族は、電気をプリペイドで買っています。小さな商店でカードを買い、そこに書いてある数字を機械に打ち込むと購入した電気量が使える仕組みです。トゥリさんの家には窓がないため日が入らず、さらには電気代を節約するため日中は電気を付けずにいるため、居室内は暗い印象がありました。収入が無いため、現在は政府から支給される家族への手当2000ランド(約18,000円)のみで生活しています。「トゥリさんの夢は何か」と尋ねると、仕事を見つけることだと話してくれました。そのトゥリさんの答えに、南アフリカの若者が抱える問題を垣間見た気がしました。
トゥリさんがご自身で建てた家
居室内は日中でも暗い状態
トゥリさんとボランティア
ハビタット南アフリカは10年前からウムガババで活動しています。住居建築から始まった活動は、現在ではコミュニティ支援と建築技術トレーニングにも及んでいます。安心して暮らせる住まいは健全で豊かな生活を営むための基盤だと考えるハビタットは、住まいそのものだけでなく、住まいを取りまく住環境の維持に関する教育にも力を入れています。ウムガババの多くの人々は掃除、ゴミの仕分けなどを生活の一部として教えられてきませんでした。そこで、ハビタットは住居建築を支援するだけでなく、建てられた家を長く維持できるよう、ペンキの塗り替えや屋根の修繕など、適切な管理、修繕方法を教えてきました。このような技術を取得できれば、自ら家の修繕を行えるようになり、家族が安心、安全に長く住まうことができます。さらに10か月に及ぶ建築技術訓練に参加すれば、ハビタットがウムガババでボランティアと建てる家にスキルドワーカー(大工)として雇用される制度を設けました。ハビタットは家を建てるだけでなく、その家に暮らす家族、そして地域の人々の長期的な生活改善にも取り組んでいます。
コミュニティリーダーと
ブロックを使った家建築
日本チームが帰国後完成したトゥリさんの新居
南アフリカをはじめ、世界中で安心、安全に暮らせる住まいを必要とする家族が待っています。海外建築ボランティアプログラムへの参加はこちら。活動へのご寄付はこちら。