[バングラデシュ ブアプール発 1月22日 プロジェクト・マネジャー 渡辺 和雄]
上野発の夜行列車おりたときから♪ という石川さゆり『津軽海峡雪景色』を聞くたびに、吹雪にけむる青森の港を思い出す。
日本はこの冬、かなり寒いそうだが、バングラデシュの冬景色を書いてみたい。昨日は朝10時になっても霧が晴れず、曇り空がつづいた。乾季だというのに濃霧のなか、雨がぱらぱらきた。建設サイトで竹の家をつくっている作業員はたいへんだったろうが、乾季に雨が降ることはまずない。
それでも霧の濃い朝は、しとしと降る音がする。雨ではない。木の葉に結露した水滴が
したたり落ちるのだ。音だけは雨が降っているように聞こえる。
枝をのばしている木の下にいると降り、そこからでると降っていないという珍現象を発見して首をかしげたものだ。
濃霧のため、10メートル先もみえない。屋上にあがると、遠くの田や畑に霧がおりて、淡い水墨画のような幻想的な世界。昼間には、そこにヤギや羊がでて草を食んでいる。
日中、地元のスタッフのなかには、半袖で仕事をしている人もいるが、わたしはだいたい冬用のオーバーを着ている。12月初め、東京の自宅から成田まで着ていたものを、そのままここで使っている。
ダッカからここブアプールに来て暮らしはじめた1ヶ月と1週間前に、鼻風邪をひいて咳こんでからというもの、オーバー着用があたりまえになってしまった。
地図で確かめると、ここは石垣島と緯度が同じくらいだ。わたしは4年前の今ごろ、沖縄のNGOで仕事をしていたが、ダッカの北80キロにあるこの地は、那覇よりも少し涼しいくらい。曇っていた昨日とは対照的に、今日は晴れ。ベットに敷いているマットレスを干した。
冬から春にかけて、暖かくなったかと思うと寒い日もある。三寒四温は、日本ばかりでなくバングラデシュにもあるといっていいだろう。
オフィス兼居室の自分の部屋の裏窓からは、隣家の庭がみえる。天気のいい日には、そこの家族が日なたぼっこをしている。ふと見ると、1個だけ置かれた木製のイスの背もたれに鶏が3羽とまってじっとしている。さかんにヤギの鳴き声も聞こえる。
車に乗っていると、あちこちの田んぼで数人が手分けして田植えをしているのが散見される。春の兆しであろう。
(1月22日)
[渡辺@バングラデシュ、ブアプール] バングラデシュ冬景色
2008/01/25