「自分は本当に恵まれている」、そう話すのは都内のアパートに暮らす70代前半の佐々木さん(仮名)です。以前はサラリーマンとして働いてきたそうですが、定年退職を迎えた頃に病気を患い、再就職を諦め、年金などで生計をたてながらおひとりで暮らしています。

佐々木さんへの支援は、佐々木さんが暮らす地域の高齢者相談センターの相談員さんからハビタットに相談が寄せられました。ハビタットでは、安心・安全に暮らす上で必要な体を休められる清潔な寝具への交換を、国内居住支援「プロジェクトホームワークス」の清掃・片付け支援の一環で行っていることから、相談は寝具の交換と収納棚の設置、簡単なお部屋の清掃でした。活動前の事前下見として佐々木さんのお宅を訪れた際の第一印象は、ミニマリストであるということでした。佐々木さんが今のお住まいに移られたのは10年近く前になるそうですが、冷蔵庫もなければ、部屋の中には家具類が一切ありませんでした。ただ、家具がないからといってモノが散乱している訳ではなく、整理整頓され床に置かれています。寝具は、今のお住まいに移られた際に新調したもので、10年という歳月の中でところどころ生地が裂けていましたが、その裂け目を丁寧にガムテープで塞ぎ、使い続けていました。一方、台所はお湯を沸かす以外はほとんど自炊をされないことから、シンクには水垢がこびりつき、ガス台にも歳月を経た油汚れが目立ち、台所のフローリング全体には頑固な油汚れが広がっています。佐々木さんは介護認定を受けているため、本来なら日常の生活援助であるヘルパーサービスを利用し、居室内の清掃を援助してもらうこともできます。しかし佐々木さんの場合は訪問看護を受けることで介護保険の支給限度額に達してしまうため、それが叶いませんでした。

そこで、寝具の交換と合わせ、無償でいただいたすのこ板を使ったハビタット手作りの棚を佐々木さんのお宅に提供し、床に置いてあるものを棚に整理することにしました。また、台所のシンクをはじめ床の汚れをお掃除することで、衛生的な環境を取り戻せるようお手伝いし、佐々木さんにも一連の活動に参加いただきました。

定年を迎え、お一人で過ごす佐々木さん、この夏に病気が悪化したことで入院となり、相談員さんをはじめ、訪問看護師さんとのつながりを持ったそうです。お部屋の中には、訪問看護の方が印刷してきてくれた看護スケジュールや緊急連絡先、緊急時の注意点などが壁に貼られていたほか、冷蔵庫を持たない佐々木さんの生活を見かねて相談員さんが使わなくなった冷蔵庫の寄付を募り、先日佐々木さんのお宅に初めて冷蔵庫が設置されたといいます。そして、こうしたつながりを通じて、新たにハビタットの支援につながったと話す佐々木さん、ピカピカになった床と台所、新たに設置され、モノが整理整頓された棚をみて、「ただただありがたい。皆さんに手伝ってもらって、自分は恵まれているよ」と口にしていました

佐々木さんへのハビタットの支援は今回をもって終了となりますが、相談員さんを通じて佐々木さんが安心・安全に過ごされることを見守ってまいります。「プロジェクトホームワークス」の清掃・片付け支援は、ボランティアによる活動への協力と、寄付者の皆さまによるサポートに支えられています。緊急事態宣言がようやく解除されたことに伴い、ボランティア動員を再開いたします。一人でも多くのボランティアが活動に協力くださることで、寄せられるニーズに応えることができます。10月以降のボランティア募集についてはこちらより詳細をご確認の上、ボランティアとして活動にご参加ください。また活動へのご寄付はこちらよりお願いいたします。