「どうせまたダメかもしれない」そう肩を落としていたのは、ハビタットの国内居住支援で住まい探しをお手伝いしたパートナーのお一人です。

国内居住支援「プロジェクトホームワークス(PHW)」では、居室内の片付けや簡易的な修繕を行い「今ある住まいを守る」活動のほかにも、「新しい住まいにつなぐ」を柱に、賃貸物件への入居が困難な方の相談を受け、入居を支援しています。

空き家の増加などが社会問題として取り上げられる一方で、民間の賃貸物件への入居が一部の方の間で困難な状態であることはご存知ですか。少子高齢化による高齢単身世帯や非正規雇用の増加などにより、孤独死や家賃滞納を恐れ、民間の賃貸住宅の大家が高齢者や障がい者、低額所得者など一部の入居を拒否するという問題が深刻となっています。公営住宅は「住宅弱者」の住宅確保という役割を担ってきましたが、財源難や人口減少によりこれ以上の戸数増加は見込めないことから、新たな対策が必要とされています。

こうした住宅課題に対応するために、2017年に新たな住宅セーフティネット制度がスタートしました。低額所得者、被災者、高齢者、障害者、子育て世帯、その他住宅の確保に特に配慮を要する者などを「住宅確保要配慮者」と定め、ハード面で「物件の登録制度の実施」とソフト面で入居や生活の向上に関する情報の提供や相談、援助を行うことで「要配慮者の入居円滑化」への取り組みが始まりました。

ハビタットも時を同じくして「今ある住まいを守る」活動を開始。2018年6月には東京都より住宅確保要配慮者へのソフト支援を行う「住宅確保要配慮者居住支援法人」の指定を受け、支援を展開してきました。

ハビタットで初めて新たな住まいを見つけ、無事に引っ越しをされた方は、当時70代後半の高齢男性でした。もともと長く路上で生活されていたその方は、高齢で体力的に遠出が難しいうえに、極度の方向音痴とのことで、一人での住まい探しに困難を抱えていました。そのためハビタットのスタッフが地域の賃貸不動産会社を周り、新たな住まい探しを支援しました。

入居後の家電を買いにリサイクル店へ同行

単身の70代後半という年齢は想像以上に物件探しが困難です。不動産屋などで年齢を伝えると、多くの場合が渋い顔をされ、物件の紹介すらしてもらえません。この方の場合、いくつもの不動産屋へ相談するなかで、ようやく物件を紹介されました。しかし、紹介後は物件の大家への申請が待っています。ようやく紹介してもらった物件も、残念ながら大家の審査が通らず入居が叶いませんでした。すっかり自信をなくされ、「どうせまたダメかもしれない」と肩を落とされていました。ただ新しく安心できる住まいを求めているだけなのにそれが難しく、自分を否定されているような気分になってしまっていたようです。この方は、幸いなことに相談開始から半年後、なんとか新たな住まいを見つけることができました。けれども、時間をかけても新たな住まいが見つからず、不都合がありながら今の住まいに住み続ける人、場合によっては住まいを失う人も多くいます。

ハビタットは一時的な住まいとなるシェルターなど、ハード面での施設を持ちませんが、円滑な入居支援が行えるよう、東京都居住支援協議会の会合への参加を通して、不動産会社をはじめ他の居住支援団体との連携を築いてきたほか、参加するハウジングファースト東京プロジェクトとのネットワーク作りを通して、居住支援法人として社会課題を理解し、適切なサービスが届けられるように努めてきました。また、入居後は、PHWのもう一本の柱「今ある住まいを守る」を実践すべく、必要に応じて入居者への見守り、またボランティアによる協力のもと住まいの環境を整える支援を行っています。

高齢化が進む日本では、こうした問題は多くの人が同じ経験をすることになるかもしれません。住まい探しから、今ある住まいの暮らしまで、ハビタットが掲げる「誰もがきちんとした場所で暮らせる世界」の実現のために、ボランティアやサポーターの皆さんにご協力いただきながら、微力ながら問題に取り組みむと共に、問題を発信して参ります。一年間活動をお支え下さりありがとうございました。