ハビタットは、都内を中心に、高齢であることや障がいを持つことなどにより、居室内の環境改善を必要とされる方のお宅を訪問し、ボランティアによる協力のもと、居室内の清掃や片付けをお手伝いする「プロジェクトホームワークス(PHW: Project HomeWorks)」に取り組んでいます。

先日オープンボランティアデイで活動を行ったのは、おひとり暮らし井田さん(70歳代)のお宅です。以前は福祉支援が入っていたそうですが、2年前に引っ越されたことを機に支援が途切れていました。日常的な生活はご自身で行っている井田さんですが、洗剤やティッシュなど同じ生活用品を何度も買ってしまうことが多い上に、洗濯しようと置いてある服をいくつも溜めておくうちに、日に日に物が増え、居室内は、大切な書類がどこにあるのか分からなくなってしまう状態でした。心臓疾患を患っていることもあり、主治医より室内環境を整えるよう指摘があったことも、今回の相談につながったきっかけでした。

活動当日、ボランティアに集まったのはマレーシア出身とアメリカ出身の計4名という国際色を感じるボランティアメンバーでした。日本語を話せなくても参加できるボランティア活動を探していたところ、ハビタットの募集を見つけて申し込んでくれたそうです。

ボランティアとともに井田さんのお宅へ伺うと、家の外に机やマットが出されており、何やら慌ただしい様子です。室内に入ると、井田さんが呼び寄せた高齢のお兄さんとお二人で、すでに片づけを始められていました。驚いてスタッフが事情を尋ねると「今朝5時から片づけている」と遠慮がちにお話してくれました。多くは語らない井田さんですが、ハビタットスタッフが事前下見で井田さんのお宅へ伺った際も、自分の部屋を見られることに恥ずかしさを感じていたようでした。そのためか、ボランティアを連れて大勢の人が来ると聞き、なんとか部屋の環境を少しでも良くしようと思われたのか、お兄さんを呼び寄せて片づけを始められていました。

井田さんとお兄さんで片づけ始めていてくれたこともあり、ボランテイアはすぐに室内、水回り、ロフトと各場所に分かれて片付けに取り掛かることができました。井田さんには、座って物の仕分けを一緒にお願いしましたが、ボランティアが床を拭いたりキッチン掃除をしたりするのを見て、じっとはしていられない様子です。「サンキュー、サンキュー」とボランティアたちに声をかける井田さん。日本語でのコミュニケーションは難しいですが、井田さんが精いっぱい発する一言一言や、表情また行動から、感謝の思いはボランティアにしっかり伝わっているようでした。半日という短い時間でしたが、居室内は見違えるようにきれいになり、長年使い古した布団も、ロフトに置かれていた新品のものと交換することができました。また、探していた大切な書類も見つかり、ひと安心です。

ボランティアたちが帰るころ、井田さんは外まで見送りに出てきてくださり、再び「サンキュー、サンキュー」と握手とともに感謝の気持ちを伝えてくれました。そして、ボランティアが見えなくなるまで手を振って見送ってくださいました。

今回私たちは、居室内の環境改善を目指してボランティアと共に井田さんのお宅を訪問しましたが、井田さんにとっては、海外出身の若者が何人も家に来るということで、少し緊張しながらもお客さんを迎え入れる感覚だったのかもしれません。居室内の環境改善はもちろんですが、井田さんにとっては、ボランティアたちを家に迎え入れたことで新たなつながりが生まれ、そのつながりが部屋を片付けようという前向きな気持ちを育み、片付けに向けた大きな活力になっていることも感じさせられる活動になりました。

参加くださったボランティアの方からは有意義な活動だったという言葉をいただき、活動後には次のオープンボランティアデイに申し込んでくださる方もいました。PHWで出会うホームパートナーは居室内の環境改善を必要としていることに加え、それぞれに異なる課題を抱えているケースがとても多いです。ボランティアによる協力は、ただその時の居室内の環境を改善するだけでなく、社会とのつながりをはじめ、今後に生きる活力を築くきっかけになることもあります。ぜひ活動にご参加いただき、プロジェクトホームワークスへの理解を深めていただけると嬉しく思います。

※11月のオープンボランティアデイは定員に達しましたので、次回は2020年1月の予定です。