滋賀県にある立命館守山高等学校は、2012年の夏から毎年春にハビタットの海外建築ボランティアプログラム(GV: Global Village Program)に参加し、タイの首都バンコク近郊のパッテゥンタニ県で取り組まれる住居建築支援を支えています。そして、今年の春も25名の生徒と2名の先生からなる総勢27名のチームを結成し、3月のパッテゥンタニ県で建築活動に取り組みました。

その立守チームが昨年の春建築支援を行ったのがチャ―エムさんご一家です。交通事故で左片麻痺となったチャ―エムさんは、働くことや身の回りの世話も一人では出来ないため、娘のサムアングさんとお孫さん2人と一緒に生活しています。生活費は政府から支給される800バーツ(約2700円)と娘さんの収入(約25000円)が一家の生活を支えていました。娘さんは防犯もない家に、小さい子供たちを残し長時間家を空けることが出来ずにいました。1年ほどハビタットからの支援を待っていたチャ―エムさん一家は、立守チームが到着した際は言葉に表せないくらい嬉しいと涙ながらに話していました。家が完成したら壁を水色に塗りたいとおっしゃっていたチャ―エムさん。今回訪問した際は水色がとてもきれいな家の玄関先で出迎えてくれました。

  • 以前暮らしていた家

  • チャ―エムさんが以前寝ていた場所

  • 以前使用していたトイレ

以前は安全とは呼べない家で暮らしていたチャ―エムさんですが、新しい家での暮らしはとても新鮮だと話してくれました。今では陶器素材を使った床が作られたおかげで、チャ―エムさんは腕を使って滑るように這いながら、家の中を1人でも移動できるようになりました。そして娘のアンサングさんは安心して子供たち2人をチャ―エムさんに預けられるようになりました。アンサングさんは仕事の合間に家に帰ってくる必要がなくなったので、少し遠出をしてお給料が良い場所へ働きに行くことが可能になったそうです。働く時間を増やすことができるようなったため、収入も増えました。そして貯金も少しですが、できるようになったそうです。以前は毎日遠くまで買い物に行かなければならず、家が完成したら冷蔵庫を持てるようになるのが楽しみだと話していました。そして冷蔵庫が持てるようになったら、それを食料でいっぱいしたいとも言っていました。その夢が叶い、現在はチャ―エムさんの手が届きやすい玄関の近くに冷蔵庫が置かれています。お気に入りの場所は玄関先で、いつもそこに座って外を眺めているそうです。
  • 完成した家

  • 衛生的なトイレ

  • 家族が集う居間

2つある寝室のうちひとつはチャ―エムさんが、もうひとつは娘さんとお孫さんたちが使っています。以前は部屋がひとつしかなく、外で寝ていたチャ―エムさんですが、今は家族とひとつ屋根の下で生活できるのはとてもハッピーだと話してくれました。そしてお孫さんたちも自分たちの部屋で遊んだりできるのを楽しんでいる様子でした。

大きくなったお孫さんたち

立命館高校の学生さんたちが建てたものは“家”だけではなく、チャ―エムさん一家が健全で安心して暮らせる生活の基盤。その基盤を築いてくれた高校生チームはチャ―エムさんにとって忘れられないボランティアになりました。昨年は以前暮らして家について訊くと悲しそうに涙を浮かべて話をするときもあったチャ―エムさんですが、今回の訪問では始終笑顔で、最後には日本の高校生たちに私たちの感謝の気持ちを伝えてほしいと話してくれました。