ハビタット・ジャパンで海外建築ボランティア「グローバル・ビレッジ・プログラム(GVプログラム: Global Village Program)」を統括している岡部です。ただ今、タイの首都バンコクから北に40キロほどの場所に位置するパットゥンタニ県に来ています。今回タイを訪れたのは、立命館守山高等学校の生徒さんと一緒にハビタットが取り組む住居建築支援活動に参加するためです。立命館守山高等学校では、高校2年次に「国際人」を育成する実践的な教育プログラムの一環として、海外研修を実施しています。そのプログラムの一つとして、2012年から毎年タイでのGVプログラムに参加しています。
3月2日朝、まだ寒さが続く日本からチームはバンコクに向けて出発し、到着後すぐオリエンテーションを受けました。そして翌日ついに家を共に建てるご家族と対面。今年は25名の生徒さんが2チームに分かれて2軒の建築をお手伝いしています。
1班が支援しているはカセムさんのご家族です。カセムさんは2000年に奥さんを子宮頸がんで亡くされてから、男手ひとつで2人の息子さんを育ててきました。現在も3人で一緒に暮らしています。家族を養うため100万円以上の借金をしてみかん農場を始めましたが、みかんが育たず期待したほどの収穫量を得ることができずに、お姉さんの力も借りながら借金返済のため毎日働いているそうです。カセムさんたちが住む家は20年以上前に建てられたもので、造りはとても簡易的です。壁はほとんど無く吹きさらしで、雨季には雨風をしのぐことが出来ずに困っていたそうです。仕切りもなく、一部屋を共同で使っています。以前はトイレもありませんでしたが、カセムさんが子供たちの為に少しの貯金をはたき、家の裏に小さなトイレを建てました。
2班が支援するのはワンペンさんのご家族です。ワンペンさんの2人の息子さんは家をすでに離れていて、夫のサマックさんとの二人暮らしです。ご夫婦共にバナナ農場で働いていますが、2人で働いても収入は一か月24,000円ほどで、さらにそのお給料はバナナの収穫時期のみ支払われるため、毎月収入があるわけではありません。現在は竹を編みこんだもので作られた壁とトタン板の屋根で出来た家で暮らしています。屋根には無数の穴が開いていて、雨季には雨漏りがひどいそうです。また全面に壁があるわけではなく、吹きさらしの部分はテントの布をあてがって日光や雨風をしのいでいます。しかし強風が吹くとテント布も煽られてしまい雨も吹き込むため、電化製品などは濡れて故障してしまいます。
2家族の生活を考えると、安全かつ衛生的に暮らせる住環境を必要としていました。しかしながら、一家の収入は日々の生活費を稼ぐのが精いっぱいで、貯金を蓄えることができずにいました。その中、ハビタットの支援を知り、支援を受けることに決めたそうです。
カセムさんの家の壁
カセムさん(左から二番目)とワンペンさんとお姉さんたち
ワンペンさんの寝室
建築活動も終盤に入り、30度以上の暑さの中、生徒さんたちは支援するご家族のため、壁となるブロック積みに精を出しています。以下、生徒さんの声をお届けします。
建築活動は想像していたよりも大変で、初日が一番大変だったと話していた健眞くん。家が完成に近づいていくのを見ると、その大変さが楽しさに変わってきたと教えてくれました。リーダーとしてチームをまとめるのは大変だけれども、団結してみんなで力を合わせて安心できる家を建てたいと意気込みを話してくれました。
以前、琵琶湖の清掃活動に参加したことがあるという温子さん。ボランティアに興味があり、普段できないことをしようと建築活動への参加を決意したそうです。言葉が通じず歯がゆい場面もありますが、タイの人はとても優しく、建築活動を通して現地の人々と関わることが今では楽しいと教えてくれました。体力を必要とする仕事は大変だけども、建てるからには綺麗で快適な生活を送れる家にしたいと話してくれました。
高校の海外プログラムの中で、タイでの建築活動を第一希望にしていた虎希くんは、欧米を旅行することは大人になってからでもできるけど、一人では出来ないことをしたくて建築活動を希望したと教えてくれました。バンコクに立ち並ぶ高層ビル群から建築活動場所までの移動時に、バスの中から見る景色の違いに驚き、家の大切さを改めて感じたようです。カセムさんとワンペンさんご一家が新しい家で楽しく過ごせるように、最後まで全力を尽くす!と話してくれました。
生徒さんほぼ全員が口をそろえて言っていたのが、「砂運びが一番大変!」でした。暑い中、慣れない作業の連続で日々格闘しながらも、何をしなければならないのか、自分たちで声を掛け合いながら活動しています。この建築活動を通して、家の大切さをみんなで再確認しながら、健全な家の完成を目指しチームをサポートしていきたいと思います。