ハビタット・フォー・ヒューマニティはこのほど、貧困問題に関する新しい報告書『きちんとした住宅への権利―アジア太平洋地域における貧困住宅の現状(A Rights to a Decent Home?Mapping Poverty Housing in the Asia-Pacific Region)』(A4横版、110頁、英文)を発表しました。ハビタットの委託によるこの調査研究は、一般的な貧困に関して広く認められている広範な出版物の中から集められた統計と研究をひとつの文書にまとめた初めての成果です。報告書にはハビタット・フォー・ヒューマニティを含むいくつかの組織によって現在行われている、将来性のあるプロジェクトについての事例研究も含まれています。また、農村部と都市部の貧困住宅の多くの原因と結果、新興する経済に対する影響などを明らかにしています。
今回の報告書には、さらなる研究のための豊富な脚注と参照文献が収められており、都市プランナーや政策立案者、開発組織、援助機関、シェルター専門家やその他、アジア太平洋地域の住宅状況に関心をもつ人々にとって貴重な情報源となるでしょう。
報告書によりますと、現在、世界のスラム地域の60%がアジア太平洋地域に位置し、そのほとんど全てが安全な水や衛生面の基礎的な設備を持たない状態にあります。これらの地域では、2030年までに新たに13億人が都市部へ流入し、そのほぼ全てが貧困層に属すことになると予測されています。こうした住宅や将来への希望を持たない人々は、経済の安定性に非常に大きな影響を与えるのみならず、急速に都市化するアジア太平洋地域において、ますます高まる住宅ニーズが重要な政治的課題になると予測しています。
国連ミレニアム開発目標(MDGs)は、189カ国の全ての国連加盟国のためのグローバルな共通の貧困削減戦略を詳説したものですが、安全な水と衛生を伴った安全できちんとした住宅へのアクセスは目標7.「持続可能な環境づくり」の中で明確に述べられています。この目標を実現するためには、2015年から2020年までにスラムに住む最低1億人の人々の生活を大きく改善し、世界中で安全な飲料水を継続的に利用できない人々の割合を半減させることが求められています。
また世界銀行は、その住宅政策文書である『市場を機能させる(Enabling Markets to Work)』において、各国政府に対し、貧困層向け住宅の建設を民間企業に任せて都市計画の規制と統制を緩和するように求めています。この政策のシフトは、住宅供給から市場を基盤とした「エネイブリング」解決策へのトレンドを明確に表しています。今回の報告書では、こうしたプロジェクトの多く、例えば住宅マイクロファイナンス、コミュニティ基金、漸進的住宅、コミュニティに基盤をおいた水供給・衛生管理、政府公共施設の部分共有モデル、コミュニティに基盤をおいた災害対策などについても議論されています。
ハビタット・フォー・ヒューマニティはこうしたプロジェクトのいくつかに関与しており、漸進的な住宅建設マイクロファイナンスのプログラムを支援しています。漸進的住宅建設では、1部屋ごとのマイクロファイナンスを提供したり、基礎部分と壁の建設のための小規模ローンを提供しています。プログレッシブ住宅建設では、ハビタットのセーブ&ビルド(貯金&建築、Save & Build)や段階的住宅建設(Build In Stages)で連続住宅の1軒ごとの建設が行われます。低収入の家族が集まり、毎週もしくは毎月貯金をして、そのグループが1軒分の住宅建設費用を貯めた時点でハビタットとそのパートナーが新たに2軒分のローンを提供し、建設が開始されます。そして、このサイクルをグループの全メンバーが住宅を持つまで繰り返します。
コミュニティ基金は、スラム・コミュニティの人々に対する、インフラ改善のための助成金ローンです。貧困軽減と地域の開発を優先する点において、多くのマイクロファイナンスの貸付機関と異なるものです。例えばマニラでは、町がコミュニティの外側の境界まで公共施設の基幹インフラを提供し、コミュニティが自身の資金によりパイプや接続部分を設置します。「部分共有モデル」です。
災害と貧困住宅は複雑に関係しています。貧困によって、人々は危険な地域にある基準以下の住宅に住み、また不可避の災害は住人をさらに深い貧困に陥れます。『きちんとした住宅への権利』はアジア太平洋地域における多くの悲劇的な事例に言及しています。ハビタットはコミュニティに基盤をおいた災害対策の一環として、ハビタット・リソース・センターのコンセプトを拡張し、人々が災害後に住宅とコミュニティを再建するための触媒となるよう、安全で効率のよい建設のトレーニングをおこなっています。このコンセプトはより低コストでより多くの人々に役立つことから、ハビタットの災害対策プログラムの主要な一部となっています。インド洋津波やパキスタンの地震を経て、重要な意味を持つことが証明されました。
ハビタットの長年の仕事によって、住宅の建設が貧困のサイクルを打破し、生活を変えるための必要不可欠な基礎を築くことが示されています。これは、極度の貧困を撲滅しようとする国連ミレニアム開発目標を達成するための重要なステップでもあり、この報告書は、この共通のビジョンを共有する人々のための情報源として役立つことを目的としています。
報告書はhttp://www.habitat.org/ap/でダウンロードすることができます。ぜひご覧ください。
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貧困問題に関する報告書を発表
2007/02/09