ハビタットの国内居住支援「プロジェクトホームワークス」では、2017年より新しい住まいを探す入居支援と、ボランティアによる協力のもと居室内の環境改善を目指す清掃支援の2本柱で、国内に潜む居住問題に取り組んでまいりましたが、この度、よりハビタットへのニーズが高まる清掃支援に特化して活動していく方針となりました。
入居支援で最後にお手伝いをしたのは、高畑さん(仮名)です。今年5月、「家賃が払えず、家を出なければならない」という相談を頂きました。話を伺うと、高畑さんには奥さんがいらっしゃり、相談をいただいた時点で奥さんは妊娠中とのことでした。これまで高畑さんご夫妻は、高畑さんの日雇いによる収入と奥さんの収入で生計を支えていましたが、奥さんがこれまでのように働けない中で、高畑さんが今年の春頃にコロナに感染して、世帯収入が激減してしまったそうです。そうした中でアパートの契約更新時期が重なり、アパートを出て行かなければならなくなったそうです。これから住むところだけでなく、今日食べるものも金銭的に工面できないほどに追い詰められた状態の中での相談でした。
喫緊の対応が必要であると判断し、まずは一時的でも生活を立て直すための拠点となる住処を探すことが最優先となりました。ハビタットが連携する団体の一つである「あしたのいえ」に連絡を取ると、所有するシェルターをお子さんが生まれるまでの2ヵ月間、使用させてもらえることになり、6月初めに、シェルターでの生活をスタートさせました。
滞在中の2ヵ月間で生活を立て直し、お子さんと3人で暮らせる新たな住まいを探すことが目標です。まずは、生活を安定させるためにセーフティネットである生活保護の申請を提案しました。しかし、「どうしても生活保護には抵抗がある」とおっしゃいます。その理由を伺うと、ご自身の複雑な生い立ちや、親戚との関係を打ち明けてくださいました。生活保護を受給すると、親戚にも連絡がいってしまうことを懸念されていたのです。しかし、人生のさまざまな場面で助けを必要とすることは誰にでも起こり得ることであり、最後には、一時的にでも社会保障によるサポートを受けて、生活の基盤を立て直すことの大切さに納得くださり、生活保護の受給を申請することになりました。
生活保護受給が決定すると、いよいよ住まい探しの始まりです。不動産店から紹介された物件を内見し、物件の申込を行いますが、生活保護受給者であることや、まもなくお子さんが生まれる世帯であることなどを理由に、初めに申し込んだ物件は、保証会社による審査で落とされてしまいました。それでも諦めずに住まい探しを続け、3つ目のアパートで無事に審査が通り、契約を行うことができました。
今、高畑さんご夫妻は、生まれてきたお子さんと3人で、新たなアパートでの生活をスタートさせています。現在のお住まいに辿りつくまでに、いくつものハードルがありましたが、ハビタットが連携する「あしたのいえ」の方々、役所の相談員さん、不動産店の方々のサポートと、何より高畑さんご夫妻が生まれてくるお子さんのために、諦めずに取り組んできたことが、新たな生活につながりました。
この度、国内居住支援「プロジェクトホームワークス」における入居支援は終了となりますが、これまでに関わってきた高畑さんを含むホームパートナーさんの見守りと、関連団体との繋がりは引き続き継続しながら、今後の活動に尽力してまいります。