ハビタットは、能登半島地震の被災者支援事業の一環として、仮設住宅に入居された方を中心に、仮設住宅団地で棚作りワークショップを3月末より開催してきました。輪島市門前町には、震災後、全部で9の地区に合計13の仮設住宅団地が建設されました。それぞれの仮設住宅団地は、用地の確保や建築工事の進み具合により完成時期が異なり、最後の仮設団地への入居は震災から8か月目を迎えた8月中旬です。そこで、ハビタットは、9月15-16日の二日間かけて、門前町で新たに入居が開始された2ヵ所の仮設住宅団地で最後の棚作りワークショップを開催しました。
初日に訪問したのは、浦上地区にある仮設住宅団地です。第二期として新たに増設され住宅に入居した方を対象に棚作りを開催しました。当日は悪天候にも関わらず、受付開始前には想定を上回る多くの住民が集まってくださいました。半日の活動で、集まってくださった皆さんの棚を作り上げるにはボランティアの手が足りません。そこで、住民さんたちにもご協力いただきながら棚作りに着手することにしました。住民の皆さんとテーブルを囲み、どんな棚を必要としているのか話を伺ったところ、多くの方が玄関周りに靴箱が欲しいと話します。そこで、まずは見本を一つ製作してようと靴箱を作り上げると、「おー、このデザイン、いいよいいよ」そんな声が聞かれ、3人、4人と続いて同様の棚が欲しいと手が上がりました。そこで、木材を効率的に加工し、みなさんにご協力いただきながら、一つずつ棚を作り上げ、3時間と限られた中で何とか集まってくださった16世帯の棚作りを終えることができました。
二日目は、8月中旬にようやく入居が開始された仮設住宅団地での棚作りです。この日は、ボランティア動員を開始した2月中旬からボランティアとして活動を支えてきてくれた金沢大学を拠点に活動するハビタットの学生支部「金大Habitat」から7名の学生ボランティアが駆け付けてくれました。仮設住宅を訪問すると、嬉しいことに、懐かしいお母さんと再会することができました。震災直後から、避難所への生活物資の配布などで立ち寄っていた集会所に避難されていた方です。仮設住宅の建設が遅れるなかでも、最後まで娘さんと二人で避難生活を続けてきたそうです。ようやく仮設に入居することができ、「安心できたよ」ととびきりの笑顔を見せてくださり、居室内のものを片付ける棚が欲しいとワークショップに参加してくれました。
金大Habitatの学生の多くが、棚作りのボランティアは3度目、4度目と話すリピーターたちです。学生たちの心強いサポートの中で、終始和気あいあいとした雰囲気で活動が進みました。あっという間に一日の活動が終わり、住民さんに活動させていただいたお礼のご挨拶をすると、「久しぶりにみんなの顔を見る機会になったわ。ありがとうね」とボランティアたちに感謝の言葉が送られました。大きな仮設住宅ではないけれども、避難所を出て、それぞれの生活が始まると、住民同士が集まる機会がなくなるそうです。この棚作りが、居室内の環境を改善するだけでなく、住民さん同士のつながりを深める機会につながったと聞くことができ、参加したスタッフも学生たちも、心が温かくなりました。
ハビタットの棚作りワークショップは、門前町の全ての仮設住宅での実施を経て終了しました。棚作りワークショップで支援した世帯は300世帯を越えています。金大Habitatの元代表として、これまで多くの学生ボランティアを門前町に連れてきてくれた北條くんは、「災害支援は初めての経験でした。被災地でのボランティアを通じて多くのことを学ぶことができました。2月後半からの活動では家屋片付けを中心にボランティアに取り組み、瓦礫や使えなくなった家具を運び出すなど復旧に携わりました。そして、そこから棚作りにお手伝いがシフトし、住民の方とお話をして、能登での生活を大切されているお話を聞きながら、生活再建、そして復興に向けた一歩をお手伝いさせていただけたのは貴重な経験です。これまでの活動を、今後の金大Habitatの活動にも生かしていってほしいと思います」と約半年近く、ハビタットと共に取り組んでくれた被災地支援の活動を振り返ってくれました。
元日の震災を受け、ハビタットは1月からこれまでの約8ヵ月間、門前町で命を守るために求められた緊急期を経て、生活再建期まで被災者の皆さんに寄り添って活動を続けてきましたが、全ての仮設住宅での棚作りワークショップの完了をもって、一旦の区切りを迎えました。皆さんのご支援で棚作りワークショップを実施できましたことに心より感謝申し上げます。
門前町では、8月の中旬に全ての仮設住宅が完成し、避難所が閉鎖されました。最後に見た門前町の景色には、広大な青空の下に美しい自然と海が輝き、少しずつですが被災した家屋の解体も進み、復興に向けた歩みをこれまで以上に感じることができました。しかし、東京に戻って3日後、再び能登が洪水被害に見舞われました。支援にあたった輪島市門前町も、川が氾濫し、土砂崩れが起き、一部の仮設住宅では浸水被害に遭うなど、復興に向けてようやく歩み始めた町は再び大きな被害に見舞われました。住民の方からは、「命は無事だけど、精神的に参っています」という声が聞かれます。今私たちにできることは何か。その答えは未だ見えていませんが、引き続き現地の情報収集に取り組み、ハビタットとしての支援の可能性を模索してまいります。
能登半島地震に対する被災者支援事業にこれまでご支援をお寄せくださった皆さま、ありがとうございました。