元日の能登半島地震の発生から8ヵ月が迎えました。緊急期の「命を守る活動」から、時間の経過とともに「住まいを再建する活動」に活動の軸足を移し、被災家屋の片付けや住宅再建に向けた被災家屋の相談事業、そして居室内を整えるための棚作りに着手してきました。こうした活動を現場でコーディネートするために、ハビタットの学生支部に所属する2名の学生が、4月から門前町で学生インターンとして活動してくれました。その一人が神戸市の大学に通う戸高さん(4年生)です。戸高さんは、留学するまでの約3ヶ月間、学生インターンとして現地で事業を支えてくれました。そんな戸高さんから、3ヵ月間の能登滞在、そしてインターンの活動を通じて得た学び、気づきを寄稿文として寄せていただきました。


インターンとして大変お世話になりました。常駐させてもらった輪島市門前町は、 山と海がすぐそばにあり、穏やかな空気が流れていて、何よりも人があたたかいそんな素敵な町でした。 初めは何か目的があったわけでもなく、ただ漠然と「誰かのために何かできれば」とだけ思い、インターンとして現地で活動させてもらうことを決めました。

現地に入るまでは、「断水している中で3ヶ月もどんな生活になるのだろう」「地域のコミュニティがある中に部外者が入り込んでしまっても良いのだろうか」とそんな不安ばかりが頭をよぎっていましたが、今思うとそんな心配は全く要らなかったほど、かけがえのない経験になりました。

私が門前町を始めて訪れたのは、インターンを始める前の3月です。ハビタットの学生支部メンバーの一人として、全国から集まった13名のメンバーと共に一ボランティアとしてハビタットの活動に参加しました。そして、インターンを開始したのが4月です。発災から3ヵ月、4ヵ月と月日は経ちましたが、いくら月日を経ても道路の両脇には全壊のお家が並んだままの光景でした。「全然変わらないね」とつい口にしてしまうほど、水道や道路の復旧も少しずつです。 それでも住民さんたちは口を揃えて「もっと大変な人たちもいるから」とおっしゃいます。そして気丈に、笑顔で接してくださいます。初めは、大変な思いをしてこられたのに、すごく前向きで明るい方たちだと感じることが多かったけれど、色々お話をお聞きしていると、心の中では常に、復興どころか全然進まない復旧への焦り、業者さんが足りなくて、家の修繕すら始められないもどかしさ、あの時、ああしておけば、こうしておけばよかったのではないか、という後悔、 家は?家族は?仕事はどうする?と決めなければならないことが多すぎて尽きない悩み、 など、これからどう生きていけばよいのかという不安に隣り合わせにあることを感じました。 そんな現状を目の当たりにしても、直接、自分に解決できることなんてほとんどなくて、自分の無力さに嫌気がさすときもあったけれど、目の前の一つ一つに向き合っていけば、小さいことだけれど自分にもできることがあるのだとも思わせてもらえました。

家屋の片付けで、大型家電や家具を楽々運ぶことはできないけれど、大事な思い出の詰まったもの、細々したものを片付け、整理整頓したり、建築士さんのように、建物や耐震への知識はないけれど、住民さんと他愛もないお喋りをして「色々話聞いてもらってすっきりした」と言っていただいたり。とにかく今、ここで自分ができることをしようと一生懸命になれた場所でした。 色んな人から、「被災地でボランティアするなんてすごいね、偉いね」と言われることが多かったですが、現地での活動を通して感じたのは、ボランティアをしているよりも「一緒に生きている」という感覚の方が大きかったです。 仮設住宅で棚づくり(組手什)のワークショップを開けば、大工さんかのように電動のこぎりを使いこなし手際よく組み立てる住民さんが、工具の持ちかたから木の種類まで、こんなものも作れるよ、と教えてくださったり、家財搬出で、家電や家具の運び出しのお手伝いをしていたら、冷たいうちに飲みな!と袋いっぱいのお菓子とともに飲み物をくださったり。モノも気持ちも、受け取ったものの方が多いように感じます。 水は通っておらず道路はでこぼこのままの被災地では、ないものを見ればあれもないこれもない、と無いものが沢山見えてしまうと思いますが、そんな時だからこそ今あるもののありがたさに気付かされました。毎日お風呂に入れて、洗濯ができて、あったかいご飯を作って食べることができること。そして、地域の人たちとのつながり、周りの人への優しさ、何気ない普段の生活。 いつどこで起こるかわからない災害にモノを備えておくことはもちろん大切ですが、何気ない日常、目の前にいる人との時間を大切にすることもまた日頃からできることなのかなと思います。

最後に、こうして門前で活動させてもらえたこと、感謝の気持ちでいっぱいです。 『能登はやさしや土までも』の言葉のとおり、あたたかく迎え入れてくださった門前の住民さん、 普段からも、何かあった時も、いつでも気にかけてくださって助けてくださった他団体の皆さん、 初めての災害支援で右も左もわからないところからのスタートでしたが、一から教えてくださって挑戦する機会をくださったハビタットのスタッフさん、ありがとうございました。 「またいつでも戻っておいでね」「帰ってくるの待ってるからね」と言ってくださる方たちがいて、「絶対また帰ってきたい」と思える場所ができたこの門前での3ヵ月間が、本当に大切な宝物になりました。


住民の方をはじめ、私たちスタッフも、戸高さんのどんな時でも絶えない笑顔、そして、なんでもチャレンジする姿に大きな力をいただいていました。そして、門前の活動にボランティアとして参加してくれた全国のキャンパスチャプターの学生たちは、一学生でありながら、被災地のために活動する戸高さんの活躍を間近に見ることで、被災地でも学生が力になれることがあると知ることができたと思います。3ヵ月間、門前町での活動を現場で支えてくださりありがとうございました!