ハビタット・ジャパンの支援を通じて、昨年末、インドネシア・ジョグジャカルタ特別州内にあるトゥクソノ村に、村の人々の健康を守る地域拠点施設が完成しました。
ハビタット・ジャパンは、2019年から海外建築ボランティア「グローバル・ビレッジ(GV)」に参加するボランティアチームをトゥクソノ村に派遣し、この地域の住宅建築を支援しています。約2,700 世帯、8,500 人が暮らすトゥクソノ村の多くの家族は農業や畜産業を営んでいますが、約44%もの世帯が貧困世帯に区分されるなど、同州では特に貧困率が高い地域です。そのため、村には構造的に脆弱な作りの家が目立ちます。水やトイレといった衛生設備が備わらず、屋外排泄といった問題も抱える中、一つの家に複数世帯が同居するなど、村の人々の健康意識は乏しく、2019年には幼児の発育阻害の割合が高く報告されました。
こうした結果を受け、子どもたちの健全な育成を図るための取り組みが行われるようになりました。今では月に一度、村で乳幼児健診が行われるほか、高齢者への定期健診なども行われています。また、乳幼児の発育阻害の要因となる母親の母乳不足を解消するために、妊産婦の定期検診と併せた栄養価の高いビスケットの提供が行われるなど、健康の促進と健康への意識改革が取り組まれてきました。こうしたコミュニティが運営する地域保健活動の拠点施設をはじめ、その活動そのものは「POSYANDU:ポシアンドゥ」と呼ばれています。
トゥクソノ村にある約165世帯500人が暮らすカリソノ地区では、地区リーダーが所有する建物の一部が、ポシアンドゥをはじめ、地域住民間の会合の場として使われてきました。しかし、建物は定期健診で必要になる診察室などが備わらない上に、手洗い場や台所が併設されていないなど、ポシアンドゥとしての利用には課題がありました。
こうした状況を受け、ハビタット・ジャパンは、トゥクソノ村のカリソノ地区に「ポシアンドゥ」の機能を含む、包括的な地域拠点施設の建築支援プロジェクトを昨年立ち上げました。そして、22年4月に開催したチャリティガラをはじめ、皆さまによるご支援のもと、7月に建築を開始し、昨年の12月、乳幼児から高齢者まで、地域の人々の健康を守る上で欠かせないポシアンドゥ、そして地域拠点施設が完成しました!
地区住民とのキックオフミーティング
コミュニティセンター完成式
幼児の定期健診の様子
健全であることが、活力ある地域そして豊かな未来を築く
カリソノ地区に建てられた地域拠点施設は、乳幼児から高齢の方までが定期的に健康観察を受けれる「ポシアンドゥ」として、また地域住民間の交流を育み、地域の発展に寄与する地域拠点施設として完成しました。施設の建築にあたっては、プロジェクトを立ち上げたばかりの22年6月、総勢60名近くの住民が集まり、施設の活用方法をはじめ、そのデザインについて活発に意見交換が行われるなど、住民の意見が尊重されるプロジェクトの実施を目指しました。そして、施設が建つ土地の整備から建物が完成するまで、毎日のように多くの住民が建築現場に駆け付け、施設の建築をお手伝いくださいました。
建築を開始してから約4ヵ月、障がいのある方の利用に配慮した拠点施設が完成しました。車いす用のスロープをはじめ、車いすに乗ったまま利用できる洋式トイレを併設しました。また、ポシアンドゥとして診察室をはじめ、栄養価のある食事を提供するための台所を完備しています。施設建物の脇には、遊具を整備し、子ども達が安心して遊べる場所を確保しています。そのほかにも、ポシアンドゥの活動に欠かせない、体重計や体温計、また血糖値の検査キットといった健康器具や、診察のための机や椅子といった家具の購入を支援しました。
建物に隣接された遊具
定期健診時の診察室
バリアフリートイレ
「村の人々の健康状態が改善されると同時に、一人ひとりが健康について考えるきっかけになってほしいです」と地区リーダーが話すように、地域拠点施設は村の人々の健康を守り、活力のある地域を形成し、人々の暮らしが良くなることを願っています。ハビタットは、コロナ禍ボランティアの海外派遣を休止していたGVプログラムを2023年春より再開し、夏には日本からトゥクソノ村へボランティアチームを派遣する予定です。引き続き、トゥクソノ村に暮らす人々が安心・安全に暮らせる家を持てるよう取り組んで参ります。地域拠点施設の建築にご支援をお寄せくださった皆さま、ありがとうございました。