先月のプロジェクトホームワークスで、住環境の改善をお手伝いしたお宅が都内の賃貸住宅に暮らす藤田さん(仮名)ご夫妻です。旦那さんは仕事で腰を痛めており、奥さんは脚を悪くされている状態とのことで、共に身体的不自由さを抱えています。
そんな藤田さんご夫妻が住まいのSOSを出したきっかけとなったのが引っ越しです。以前のお住まいはお風呂場の浴槽が深く、不自由な体では浴槽をまたげず不便さを感じており、そうした住まいの構造的理由から引っ越しを決めたそうです。しかしながら、荷物がたくさんあり、ご夫妻二人で引っ越しにあたり準備を整えること、引越し後の環境を整えることに不安を感じ、役所に相談したところ、ハビタットが取り組む居住支援「プロジェクトホームワークス」を知ったそうです。
ハビタットは、引っ越し後の片付けのお手伝いに伺うことになりました。家に上がると、室内は思いのほか片付いています。話を伺うと、ご夫婦である程度不要なものは処分できたそうです。ただ、タンスを開けると、そこには大量の衣類があり、ご両親から譲り受けた大切な物なども整理されずに押し込められている状態で、整理整頓ができずに不安を抱えているとのことでした。
そこで、タンスの中に収納棚がないことから、DIYで棚を作り、物の整理整頓を手伝うことで住みよい環境づくりを目指すことにしました。活動当日に集まったのはキャンパスチャプターに所属する大学生4名です。藤田さんに確認しながら、まずは洋服ダンスから溢れそうな洋服を季節ごとに仕分けることから作業を始めました。一つ一つ藤田さんに確認する中で自然と会話も生まれ、藤田さんが疲れてしまわないか心配するほどでしたが、活動が終わると「若いパワーをもらいました」との声が聞かれました。
そして、今回初の挑戦となったのが「棚づくり」です。長年ハビタットの活動をグローバルで支えてくださっているヒルティの日本法人「日本ヒルティ」が、イベントで利用した木材の香りがするすのこを寄付してくださったことで実現しました。ボランティアにとっても、ハビタットスタッフにとってもすのこを使った棚づくりはこの日が初めて。押入れに収まるサイズを測り、裁断した木材の断面にサンドペーパーをかけ、ニスを塗り、組み立てていきます。ハンドメイドでも長く使ってもらえるように、アイデアを出し合いながら使いやすい棚のデザインを考え、丁寧に作業しました。
そして完成した棚が押入れに収められると、自然と拍手が沸き上がり、藤田さんからも「すばらしい!」と満足の声が。DIYに初挑戦したボランティアも藤田さんの様子を見て安堵し、喜んでいました。別れ際、家の外までボランティアを見送り、最後まで手を振ってくださった藤田さんからは言葉に表せない感謝の思いが伝わってきました。
住まいの環境を整えることは、床を磨いたり、不要なものを捨てたりする活動だけにとどまりません。収納を見直すことで、片付けがしやすい住環境が生まれ、住まいが居心地良い場所に生まれ変わります。棚ができ、整理整頓ができるようになったことで、これから藤田さんご夫妻で住みよい住環境を維持していかれることを見守っていきたいと思います。